上写真=横浜FC戦の自らのプレーを例に出して改善策を探っていった(写真◎Getty Images)
「もう少し届かせたい」
「失点が多いのは確かですね」
中谷進之介がチームの問題点を洗い出す。守護神のランゲラック、センターバックのパートナーの丸山祐市と3人でリーグ戦全試合フルタイム出場を続ける中で、今年の名古屋の酸いも甘いも経験してきた。
リーグ戦では9月5日の第14節で鹿島アントラーズに1-3、第15節の横浜F・マリノス戦で2-1、第16節の横浜FC戦で2-3と、ここ3試合で7失点。それまでが12試合で8失点だから、確かに中谷の言うように失点が増えている。
自分のプレーを例にとって、ポイントを提示してみせた。横浜FC戦の78分、瀬沼優司に抜け出されたところに中谷がついていき、シュートの瞬間にスライディングしながら左足を伸ばした場面。
「アクシデント的に、誰かがミスしてからのカウンターなどが多くなってはいて、ボールを取られる場所とか不用意なミスをしないことも大事になってきますけど、前までは最後のところで体を張れていて守れていたので、横浜FC戦でスライディングした場面は、もう少し届かせたいという思いはありました」
伸ばした足の間をボールは抜けていき、ゴールに流し込まれてこれが決勝点となってしまった。やはり突き詰めれば、最後には個人対個人のぎりぎりの勝負のところが明暗を分けるということだ。戦術の問題や仲間のミスの有無に原因を求めるのは難しい話ではないのだが、中谷は自分のアクションの不備を明示した。それはセンターバックとして常に危険と背中合わせで生きてきた経験が言わせる責任感なのだろう。
守備がうまくいっていたときもいかなくなってきたときも、その姿勢については「正直にいうと違わないというか、変わらない」という。「失点しそうかな、というときに失点しているかというとそうでもないし、良いアプローチができている中でも失点してしまうときもある」と冷静に現象を見つめている。それは自分たちのミスから逃げるという意味ではなく、感情に流されて本質を見落とさないように注意深いだけだ。
「いかにセットした状態に持っていけるかだと思います。セレッソがボールを取られたときの切り替えが早くて引き込むスピードが速いように。引き込むと強いので、ディフェンス陣で時間を稼げるところはあると思う」
頭の中はしっかり整理されている。
次節はヴィッセル神戸が相手。攻撃力を自慢とするチームだ。
「古橋(亨梧)選手の飛び出しやチャンスメークが気になりますし、藤本(憲明)選手も出ていてクロスからの得点も多いので、その2枚は注意していきたい」
ようやく小休止した連戦の合間の1週間で、堅守を取り戻すために「誰かが出ていったら誰かが絞るというところをおろそかにしてはいけないよね、という確認をしました」ともう一度基本に立ち返った。それを神戸を相手に実践するだけだ。