川崎フロンターレのMF田中碧が、J1第16節・サンフレッチェ広島戦で獅子奮迅の活躍を披露した。アンカーではなく、左インサイドハーフで4試合ぶりに先発すると、縦横無尽にピッチを駆けて自ら2得点をマーク。気持ちのこもったプレーで勝利に貢献した。

上写真=覚悟を持って試合に臨んでいた田中。ゴールを決めて感情を爆発させた(写真◎J.LEAGUE)

■2020年9月13日 J1リーグ第16節(@等々力/観衆4,770人)
川崎F 5-1 広島
得点:(川)田中碧2、レアンドロ・ダミアン、山村和也、小林悠
   (広)浅野雄也

「結果を残せてほっとしている」

 直近3試合で出場時間がわずか1分。エネルギーがあり余っている東京五輪世代の22歳が燃えないわけがない。

「ここで結果を残さないと、もう試合に出られなくなると思っていました」

 8月26日のヴィッセル神戸戦以来、4試合ぶりに先発出場したボランチの田中碧は前半から大暴れする。0-0の14分、いきなり見せ場がやってくる。山根視来から素早いリターンパスを受けると、右足を鋭く振り抜く。低い弾道のシュートは相手GK大迫敬介のニアサイドを抜けて、ポストに当たってゴールに滑り込んだ。

 存在感を示したのは前半だけではない。後半に入っても、運動量はほとんど低下することなく、縦横無尽に走り回った。3点リードで迎えた51分には長い距離を走り、2列目から裏に抜け出して一気にペナルティーエリア内へ。齋藤学の右クロスを右足アウトサイドでぴたりと止めると、相手GKが出てくるタイミングを見計らい、落ち着いて右足でゴールに流し込んだ。どん欲に攻め続ける川崎フロンターレの姿勢を示すような得点だった。

「あのタイミングは、チャンスになると思いました。そこでゴールを決めることが僕の価値です」

 4点差が開いてからも田中のプレー強度が落ちることはなかった。中盤の守備では体を張り、必死に食らいついていく。華麗にパスを回すだけではない。奪われたボールは電光石火のごとく回収し、すぐさま再び攻撃を仕掛ける。攻守両面の好プレーに拍手が送られるホームの等々力競技場で、気持ちいいほど讃えられていた。

 ジュニア世代からの生え抜きはプロ4年目。ルーキーイヤーからリーグ2連覇を経験しているが、その2シーズンのリーグ戦出場は計4試合のみ。優勝に大きく貢献したとは言い難い。

 今季はシーズン序盤から主軸として活躍しており、懸ける思いもある。一時期はレギュラー争いで一歩後退しそうになったが、この日の活躍で払拭。本人は「もう1点取りたかった」と満足はしていなかったが、「結果を残せてほっとしている」と胸をなでおろした。アグレッシブなプレーに期待していた鬼木達監督にも高く評価されていた。

「2点も取ってくれました。ここで結果を出すのは素晴らしい」

 後半戦に向けて、頼もしい男が改めて存在感を示した。3度目のリーグ優勝には、25番の積極果敢なプレーは欠かせない。

取材◎杉園昌之


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