上写真=渡独前、最後の試合に向けて調整する室屋成(写真◎FC東京)
挑戦しないといけない
右サイドで労を惜しまず攻守に働き、気持ちのこもったプレーでチームを支えてきた不動の右サイドバックが、海を渡ることになった。前半に4点を叩き込まれた3節の川崎フロンターレ戦。敗色濃厚の状況で後半から登場すると、気迫のプレーでチームを鼓舞。森重真人も長谷川健太監督もその姿勢に賛辞を惜しまなかった。いついかなるときも現在のFC東京を根幹たる『戦う姿勢』や『ハードワーク』を体現できる選手、それが室屋成というプレーヤーだろう。
そんなチームファーストを貫く選手が移籍を決めた。そこに並々ならぬ思いがあるのは間違いない。
「シーズンの途中で移籍するのは、チームに迷惑をかけてしまうし、すごく申し訳ない気持ちを感じています。ただ限られたサッカー選手のキャリアを考えたとき、実際に、こういうオファーが届いて、断ることができなかったというのが素直な気持ちです」
「(ハノファーに所属する原口)元気くんとは代表とかでもけっこう仲良くさせてもらっていて、自分にも電話がかかってきて、何回も『早く来い』と言ってくれました。この状況の中で、個人的には東京にずっと、というふうにも思っていたんですけど、コロナ禍でサッカーできない期間に、やっぱり色んなものに挑戦しないといけないなと感じることが多くて。そのあとに実際にレターが届いて、すぐに行きたいという気持ちになりました」
理由は、挑戦だ。代表での活躍を見据えて、ということでもない。
「(海外でのプレーは)選手それぞれが選択していくものであって、Jリーグにいるから成長できないとか、自分は一切思っていません。ただ、実際にこうやってオファーが来たときに、単純に一人のサッカー選手として、海外でプレーしてみたいとか、自分が経験したことのない環境の中でプレーしてみたいという感情が沸いてきました」
未知の環境に挑戦する権利を得た。それゆえの決断。
「今、クラブは確実にいい方向に進んでいると思いますし、健太さんのもとで、どんどん強くなっていると思う。僕が何か言うことはないですけど、若い選手が最近はどんどん絡んできているし、突き上げてきてくれているので、そういう選手が次は主力になって、タイトルを取ってくれるんじゃないかと思っています」
2016年からプレーするFC東京への期待も口にした。自身の手でタイトルをファン・サポーターに届けられなかったことは心残りだが、その思いを託せる選手たちがいると話す。渡独前、最後の試合となる今日15日の名古屋グランパス戦も、これまでと変わらず気持ちが伝わるプレーで、勝利を届けたいと言った。
「大学からFC東京一本で100試合以上出させてもらいました。良いシーズンも悪いシーズンもあって、その中でも多くの試合に出させてもらって本当にたくさんの経験をさせてもらった。最後は勝って、いい形で向こうに行きたい。気持ちの部分でサポーターを魅了するようなプレーを見せたいと思います」
今夜の名古屋戦はFC東京の室屋成の熱い気持ちを感じる、貴重な機会になるだろう。味の素スタジムの右サイドを駆る背番号2に、刮目せよーー。