上写真=マルチなスタイルでピッチを走る戸嶋。J1でも存在感を残したい(写真◎Getty Images)
「決定的な仕事ができていない」
暑い夏は運動量豊富な背番号28にお任せあれ! 戸嶋祥郎が出番を増やして夏を迎えている。
アルビレックス新潟から移籍してきた今季、再開後は5試合に出場していて、例えば先発した横浜FC戦ではボランチ、川崎フロンターレ戦ではインサイドハーフで起用され、ここ2試合のベガルタ仙台戦と名古屋グランパス戦では途中から出場してサイドハーフとしてプレー。ネルシーニョ監督の戦術の幅を広げる存在としてクローズアップされるようになってきた。
「スタートで出ることがすべてではなくて、チームに必要とされるには決定的な仕事をしなければなりません。自分の役割をしっかりこなしたい」
欲がないのではなくて、チーム全体を見回して自分がすべきことをするという視野の広さゆえの言葉だが、その生真面目さで自分への課題を次々とリストアップしている。
例えば、サイドハーフとしてであれば「自分の特徴を知ってもらうことが大事だと思っています。ボランチやシャドーのときよりも裏に抜ける回数を増やしています」と相手の背後へ走り抜けることを強調する。
チームの一員としての現在地は、「やるべきことの理解は深まっていますが、周りとのコミュニケーション、意思疎通はまだまだ足りないと感じています。戦術理解の部分でもまだ自分が浮いている感じがしていて、引き続きやらなきゃなと思います」という自己分析だ。
この2点を合わせて象徴するようなシーンは、アウェーで1-0の勝利を収めた名古屋戦にあった。71分にオルンガが決めた決勝ゴールは、きっかけは戸嶋だった。相手と激しく競り合って負けずに足を伸ばして味方につなげたボールが、ヒシャルジソン、江坂任と渡って最後はオルンガが流し込んだもの。公式記録には「右8→10~↑中央14左足S」と記載され、この戸嶋の貢献は残っていないのだが、実はここにも大いなる反省があるという。
「サイドハーフだったので常に背後を狙っていて、あのシーンは古賀(太陽)選手が持ったときもそうだったんです。でも、手前に付けるパスが来たので僕が遅れる形になって相手を背負う形になってしまいました。なんとか自分たちのボールにできたのはよかったのですが、背負う状況は避けたいところで、意思が合っていませんでした」
裏に抜けたい自分の意思とチームのボール運びのズレが、相手からのプレッシャーを呼び込んでしまった形だった。それでも、Jリーグでも屈指のフィジカルを持つ吉田豊に食いつかれてもボールを渡さなかった部分は成長の証だろう。
8月の2試合目はルヴァンカップの湘南ベルマーレ戦だ。新潟時代も最初にルヴァンカップで出番を得て序列をひっくり返したことで、活躍の場を広げた。
「攻撃で僕がノッキングしたりブレーキになるのは減ってきたかなとは思います。でも、チームになじむだけでは意味がなくて、特徴を理解してもらって活躍しないと。まだ決定的な仕事ができていないので、やらなきゃいけないんです」
サイドアタックも序列も駆け抜けていく夏。誰よりも走れるからこそ、どのポジションを与えられても、ピッチに立ったら「決定的な仕事」を自分に求めるのみだ。