上写真=13年前の横浜FM対横浜FCをスタンドで見ていたという中山克広(写真◎J.LEAGUE)
弟に結果を逆転したよと報告したい
2007年8月11日。日産スタジアムのスタンドに、中山克広はいた。当時、11歳。横浜FCのジュニアユースに所属し、弟とともに横浜F・マリノス対横浜FCを観戦していた。
結果は1-8の歴史的な大敗。横浜ダービーに心を躍らせていた中山少年にとって、その一戦は苦い記憶として刻まれている。
あの日から13年の時を経て、中山は明日、横浜FCの一員として日産スタジアムのピッチに立つ。苦い記憶を払拭するには自らの力でチームを勝利に導き、歴史を上書きするしかない。
「僕が小学5年生の時、ちょうど横浜FCにJ1に昇格した年で、ダービーで1-8で負けてしまって…。僕もそこで力になれるという感慨深い試合になると感じています。結果をしっかり出してチームを勝利に導きたいと思います」
中山は昨季、そのスピードでチームの勝利に貢献し、大きなインパクトを残した。しかし今季は、ウイングバックという新たなポジションになったこと、そしてコンディションがまだベストな状態はないこともあり、まだまだ本領を発揮できていない。横浜ダービーをきっかけに、J1の舞台でもその才能を示したいとの思いは強い。
「いまこのチームに求められているウイングバックの仕事というのは、守備の部分ではなくて、攻撃でどんだけパワーが出せるかという部分。僕に関してはまだ去年ほどの突破力が全然出せていないので、まずはそこを自分が表現していかなければ、スタメンは取れないなと思っています。コンディションの部分も含め、そこをどう改善していくか、自分の100パーセントを出していきたい」
疾風のようなドリブルで圧倒的な存在感を示した昨シーズンの再現を狙うには、横浜FM戦は格好の舞台だろう。相手のサイドバックは持ち場を離れてビルドアップに加担し、積極的に攻め上がる。スペースを突く機会が十分にあるはずだからだ。
「守備になったら、ウイングバックは下がりますが、カウンターになると一番前まで出て行かなければならない。そのタイミングが重要。思い切って出て行ったときは、自分で仕掛けたい。(横浜FMは)両サイドが空くので、味方を探すのではなく、自分でまず高い位置まで持ち込んでいって、そこからクロスだったり、パスだったり、シュートだったりを選択できれば」
攻略のイメージは描けている。
「勝って、ちゃんと弟に『あのときに結果を逆転したよ』と報告したい」
プロになった中山少年は明日、ピッチの上で13年越しのリベンジに臨む。