個人的にも楽しみ
ていねいな戦略を準備し、緻密な戦術に落とし込んでいく知将。そんな下平隆宏監督が「ニューノーマル」なルールをどのように利用して、新・下平流で昇格初年度を戦い抜いていくのかは、再開後の楽しみの一つだろう。
過密日程であること。交代枠が従来の3人から5人まで増えたこと。そして、降格がないシーズンであること。それが下平監督の意識にどんな影響を与えたのだろうか。
「レギュレーションが変わりましたから、開幕前と同じ状況になるとは思っていなくて、それに応じた戦略を考えました。過密日程であることや交代枠が増えたことに応じたものを考えないといけません」
さっそく、この中断期間に選手たちに「新しいこと」を落とし込んできたのだという。
「前から積極的にプレッシャーをかけ、そのかけ方も従来と変えたり、カウンターの仕掛けも変えたりとトライしています。どこまで出せるかは、個人的にも楽しみなんです。新しいことにトライしているところなので、完成度は低いけれど、伸びしろはあります」
もちろん、会見でその詳細を明かすわけはないが、「新しいこと」を構築していく上ではもちろん、今回の特別ルールが密接に関係していくと見ている。
「(降格がないことで)若手も使えますし、新しい選手も使えます。降格の恐れがある中でのプレーではなくなりますから、とてもポジティブにとらえています。チームづくりに有利に働くと思います」
それは横浜FCに限ったことではないが、それだけに、これまでとは違ったサッカーをさまざまに楽しむことのできるポジティブな要素が見る側にもあるということだ。
交代のタイミングは早まる
交代枠が増えたことについても、利点だととらえる。
「もともと僕の好きなサッカー、志向しているサッカーは攻撃を組み立てていくというもので、もちろん守備の面でもしっかりやっていきたい。そこからカウンターにもトライしていったり、前からプレッシャーをかけることで消耗するでしょう。でも、5人まで交代できるので、逆に選手にはハードワークを課してトライしてもらえます」
「交代カードを切るタイミングが早まるなと思います。その試合の戦術的な変え方もあるし、シーズンを考えたときに次のゲームを考えて休ませたりということを考えると、早くしようかなと思っています」
「降格がなくなったから若手を重視していく、というわけではなく、今季はトップ10に入るという目標があるので、一番いい選手をチョイスしたい。勝つために何をするかを重視したいと思います」
ペース配分にこれまで以上気を使わなくてもよくなり、戦術的にカードを切るテンポも変わってくる。そういうシミュレーションを済ませているというわけだ。選手の交代やその配置の変化によってゲームの流れを一気に変えるのに、下平監督の戦術的バリエーションは増える一方だろう。
再開初戦の相手は北海道コンサドーレ札幌だ。敵将は、同じように「戦術テクニシャン」とも言えるペトロビッチ監督だ。ベンチ同士のバトルも熱くなるに違いない。
「札幌は攻撃的なチームであることは間違いありません。情報によると、ハイプレスをトライしていると聞いています。それに対して、うちがボールを持てるかが焦点になります。攻撃力のあるチームに対してずっと受けに回るのではなく、守備をしながら攻撃へつなげていきたいと思います」
ホットな戦いは、すでに始まっている。