身近に手本がいる幸運
攻撃の局面で光る軽業師は概して守りに回ると「軽さ」が足かせになりやい。軽量という意味合いもあるが、それ以上に守り方自体が軽いのだ。
佐々木はその手の危うさを感じさせない。J2で揉まれた修行の成果でもあるのだろう。
リャンの後継者に名乗りを上げるなら、相手が誰であれ、一歩も引かないガッツが必須――とは当方の勝手な思い込み。ただ、あれこそベガルタ魂の核心じゃないかとも思う。リャンと在籍年数で並んだ最古参の富田晋伍にも同じものが宿っているはずだ。そして、佐々木にも。
とはいえ、まだまだ乗り越えるべき山がありそうだ。開幕戦では後半のピッチに立つと、急速に勢いを失った。60分を過ぎたところで、関口訓充にバトンを譲っている。前半に飛ばしすぎたか、守りに追われて想像以上に消耗したか……。ともあれ、ゲーム体力を養い、さらにタフさを身につける必要があるかもしれない。
その点、格好の手本が身近にあるのは幸運だ。関口である。5年ほど他クラブに籍を置き、2年前に復帰した古参の一人。34歳になったいまも、よく走る。まだまだ走る。昨季も左サイドで休みなく上下動を繰り返し、ここ一番では貴重な決め手にもなった。
この関口に加え、同じポジションには離脱中の大駒イサック・クエンカまでいる。そんな厳しい環境でサバイバルし、実戦経験を積み重ねてこそ旗頭への足がかりがつかめるというもの。
リャンの跡目を継ぐ日はまだ先でも、大事な大事な初めの一歩はすでに踏み出しているはずだ。
Profile
ささき・たくみ◎1998年3月30日生まれ、宮城県仙台市出身。ベガルタ仙台の下部組織で育ち、2016年にトップチームに昇格。翌17年にヴォルティス徳島に期限付きで移籍し、18年もカマタマーレ讃岐に期限付き移籍して40試合に出場した。昨季はレノファ山口でプレーして経験を積み、今季、仙台に復帰。ルヴァンカップ、J1ともに開幕戦に先発を果たした。MF。166cm、59kg