現在、Jリーグは開幕戦を終えて中断中だが、この連載では再開後のリーグ戦でさらなる活躍が期待される各クラブの注目選手を紹介していく。連載第9回は、セレッソ大阪の新戦力、MF坂元達裕を取り上げる。

相手を手玉に取る切り返し

画像: ルヴァンカップ開幕戦の松本戦も先発し、勝利に貢献した(写真◎J.LEAGUE)

ルヴァンカップ開幕戦の松本戦も先発し、勝利に貢献した(写真◎J.LEAGUE)

 いや、切り返し自体は大技じゃない。子どもでもできる。だが、坂元のそれは完璧な「抜き技」として体に染みついたもの。もっと言えば、分かっちゃいけるけど止められない――というシロモノだろうか。大分トリニータを破った先のJ1開幕戦でも、これで刺客を手玉に取った。

 狭い空間ではウナギみたいだが、広い空間では気まぐれなウサギのように動いては止まり、また動く。ほかの選手とはブレーキとアクセルの性能が違うのだろう。急停止と急発進を繰り返す緩急の落差と電光石火の動きについていける守備者が果たして、どれだけいるか。
 
 とにかく、ボールを持てば自信満々。間合い、さらし方(置き場所)の妙に加え、ボールと守備者の間に体をねじ込んで幕を張るスリーンも実に巧み。一度持ったら、まず取られない。そうして寄せ手を足止めし、味方の攻め上がりを促していく。貴重なタイムメーカーでもあるわけだ。

 開幕戦でも一度、大外でタメをつくり、背後からサイド裏へすり抜ける松田陸へジャストのパスを通し、ブルーノ・メンデスのボレーを呼び込んだ。もうゴールしか見えない――というソリストとは違う。松田との連係を含め、周囲とのつながりが深まるほど、見せ場も増えるだろう。

 ただ、お楽しみはやっぱり大外での1対1だ。切り返し連発の稲妻模様の細工も仕込み済みかもしれないが、トリックが何であれ、坂元の仕掛けなら何度でも見てみたい。仮にリーグ再開が桜の季節を過ぎたとしても、見事に咲き誇る坂元桜をしかと堪能できるはずだ。

Profile
さかもと・たつひろ◎1996年10月22日生まれ、東京都出身。前橋育英高から東洋大を経て、2019年にモンテディオ山形に入団。プロ1年目からチームの主軸を担い、J2リーグ全42試合に出場し、7得点を記録した。今季、オファーを受け、セレッソ大阪に加入。ルヴァンカップ開幕戦、J1開幕戦とも先発フル出場を果たし、鋭いドリブルで存在感を示した。MF。170cm、63kg


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