上写真=京都への加入が内定している安齋(左)と、水戸への加入が内定している碇(写真◎川端暁彦〈安齋〉、森田将義〈碇〉)
[識者プロフィール]
川端暁彦(かわばた・あきひこ)/『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。
森田将義(もりた・まさよし)/テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。
※サッカーマガジン2024年2月号に掲載された記事を再構成
ひと皮むけた安齋、碇は得点が取れる
――川端さんの注目選手は?
川端 まずは京都への加入内定が発表された尚志(福島)のFW安齋悠人(あんざい・ゆうと)です。『自在系』のドリブラーで、サイドから相手の守備を切り崩します。
森田 分かっていても止められない速さですよね。縦にキュッと加速して突破していく。
川端 ウイングの位置で1対1の状況を作れば、突破してくれますからね。3年生になって責任感が増し、U-19日本代表に選ばれるなど注目されたことも大きかったはずです。チームを勝たせるために何をすればいいのか、考えてプレーするようになり、ひと皮むけた感じがします。
森田 初戦(2回戦)の相手が昨年度優勝の岡山学芸館(岡山)で、たまたま抽選会翌日に取材に行ったんです。昨年度のプレミアリーグ参入プレーオフで尚志に敗れているので、高原良明監督も安齋について話していましたが、どうやって抑えるか。
川端 対戦チームは知恵を絞るはずです。ただプレミアリーグEASTで青森山田(青森)が、安齋だけは絶対に抑えると意気込んで臨んだのに、そこから守備が決壊して敗れています。止めるのは簡単なミッションではないですよ。ボールを持てば会場が沸く、見ていて楽しい選手です。
――森田さんは、どうでしょう。
森田 水戸への加入が内定している大津(熊本)のFW碇明日麻(いかり・あすま)です。
川端 この企画で2年前に、注目の1年生として取り上げましたね。
森田 1年時はFW、2年時はCBでしたが、もともと平岡和徳総監督は「トニーニョ・セレーゾのような選手」と言っていて、今年度の最初はボランチでした。そこからJクラブの練習に参加するなどして、本人も「今年度の高校サッカーといえば碇、と言われる選手になりたい」と語る欲が出てきた。そのためには点を取るしかない、という意識で、ポジションがシャドーになり、実際にプレミアリーグWESTでは20得点で得点王ですから、点が取れる選手になったのが大きいです。
川端 選手権で勝ち上がる、という視点で見ると、守備を固めてくる相手に碇の高さというオプションを持っているのが、大津の強みですよね。187センチですから。
森田 大津はDF田辺幸久(たなべ・よしひさ)、MF古川大地(ふるかわ・たいち)とサイドに良い選手がいるので、クロスに合わせてのヘッドがあるし、もちろんセットプレーでも脅威になる。セットプレーからの得点だけでのハットトリックもありました。左右両足でのミドルシュートもあって得点パターンが豊富なので、この年の選手権といえば碇、という活躍を見せる可能性は十分です。
――ゴールを決める選手は目立つので、注目度が高まりますね。
川端 ゴールで目立ったといえば、日章学園(宮崎)のMF高岡伶颯(たかおか・れんと)です。U-17ワールドカップ(W杯)を現地取材しましたが、グループステージ3試合で4得点、日本の全得点を決めて強烈なインパクトを残しました。スピードやアジリティー、ゴールセンスなども素晴らしいのですが、何より、人としてのエネルギーがある。選手権で例えるなら岡崎慎司の系譜を継ぐ2年生だと思います。
森田 1年生のときは、まだ知る人ぞ知るという存在でしたよね。「日章学園にすごい選手がいる」という噂を聞いていて、今年の九州新人大会で初めて取材したときに「これが噂の高岡か」と思いました。
川端 U-17日本代表の森山佳郎監督が「自分で自分という石を磨ける選手でなければ、上のレベルには生き残っていけない」と言っていて、まさに高岡は自分で磨ける選手。2023年6月のAFC・U-17アジアカップが終わった後に「このままではダメ。課題だらけです」と言っていて、そこからW杯までの短い間にレベルアップしてきました。そういう魂があることも、見る者を引きつけるプレーにつながっているでしょう。
森田 相手に当たられても簡単に倒れないし、仕掛けて引きつけてからのパスもうまい。スピードを生かした前からのプレスも強烈で、いろいろなことができる選手ですね。
※中編に続く