上写真＝川崎Fへの加入が内定している神田（左）と、清水への加入が内定している郡司（写真◎石倉利英〈神田〉、川端暁彦〈郡司〉）
［識者プロフィール］
川端暁彦（かわばた・あきひこ）／『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。
森田将義（もりた・まさよし）／テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。
※サッカーマガジン2024年2月号に掲載された記事を再構成
前編はこちら！
https://soccermagazine.jp/highschool/17675527
郡司は『技能』が武器、神田は小林悠のよう
――Jクラブへの加入が内定している選手は、ほかにもいますね。
森田 市立船橋（千葉）のFW郡司璃来（ぐんじ・りく）が清水に加入します。1年生のときからドリブルの推進力やスピードは目立っていましたが、さらにゴール前で落ち着いていて、シュートセンス、得点感覚などのストライカーらしさが、より磨かれた印象です。
川端 技術よりも『技能』と言った方がいいかもしれません。スピードやパワーに加えて「ここでループ？」や「その位置からミドル？」など、それを決めるか、というシュートが飛び出すのが魅力で、GKにとっては、すごく嫌だと思います。
森田 インターハイのときに「以前はGKを見ないで思い切りシュートを打っていたけど、コーチに言われて、しっかりGKを見て打つようになった」と話していました。そんなことか、と思われるかもしれませんが、チャンスの際に冷静でいられるのは大事ですからね。
川端 FWでは、川崎Fに加入する静岡学園（静岡）の神田奏真（かんだ・そうま）も注目です。川崎Fの先輩・小林悠のようなタイプで、身長178センチと大柄ではないですが、自分の個性をゴール前で出せるタイプ。もう復帰していますが、ケガで予選を欠場したので、どこまでコンディションを戻せるかがカギになると思います。
森田 前線で頑張ることができる選手ですよね。プレスなど守備でボールを奪える上に、点が取れるようになった。静岡学園だと『うまさ』のイメージですが、ボールを失ってからの守備への切り替えでスイッチになる存在なので、いるか・いないかでサッカーも変わってくる。戻ってきたのは大きいです。
川端 確かに、静岡学園のイメージとは異なる選手です。テクニックで相手をかわして、ではなく、ゴール前で強い上に、うまさを出して点を決める。インターハイも1回戦で敗れましたが、「それを決めるのが神田だよな」とみんなで話すような、ちょっと泥くさいけど、ストライカーらしいゴールを決めていました。彼の出来はポイントでしょうね。
森田 同じ静岡学園で、徳島に加入するMF高田優（たかだ・ゆう）も、歴代の静岡学園の10番とは異なるタイプです。2年前の10番が古川陽介（現・磐田）ですが、1人でドリブルで突破できる古川に対して、高田は周りを使いながら、コンビネーションで崩すことができる。ボールを持ったときの判断や、行くと見せかけてパス、といった駆け引きが魅力です。
川端 パスに魅力があるドリブラーで、そういうタイプだと、それで終わりという選手が多いのですが、加えて高田は点が取れる。そこが違うところであり、個性ですね。
――静岡学園は3人のJクラブ加入内定が発表されています。
川端 残る1人がGK中村圭佑（なかむら・けいすけ）で、東京Vに加入します。埼玉の尾間木少年団出身で、FC東京U-15むさし、さらに静岡学園に進みました。
森田 小学生のときはフィールドプレーヤーだったそうですが、FC東京U-15むさしに進むときに、GKとしてスカウトされたとか。
川端 体が大きかったので、足技もある未来型のGKになれるぞ、と誘われたそうですね。ただ足技が特徴というわけでもなく、セービングもしっかりしています。
森田 岡山への加入が内定している飯塚（福岡）のDF藤井葉大（ふじい・ようた）は、180センチとサイズのある左SBです。もともとアタッカーなのに守備がうまいのが売りでしたが、今年度はCBでプレーする機会も多くて、経験を積んで守備の力強さが増しています。チームのことを考えて守備に重きを置きつつ、スキを見て前に出ていくプレースタイルになって、SBらしくなりました。
川端 中辻喜敬監督も「キャプテンを任せたことで、オフ・ザ・ピッチも含めて精神面の成長を感じる」と話していましたよ。
森田 昨年、U-16日本代表に招集されたことなどで、少しずつ意識が高くなっています。フィジカルを強化しなければいけないと食事に気をつけたり、睡眠時間を増やしたり。キャプテンを任されてリーダーシップも出てきました。初戦（2回戦）で青森山田（青森）を相手に、どんなプレーを見せるのか楽しみですね。
川端 左SBでは、水戸に加入する日大藤沢（神奈川）のDF尾野優日（おの・ゆうひ）も、178センチのサイズで左利きという希少価値の高い左SBです。ドリブル突破が武器で、どんどん仕掛けていって左サイドで違いを出せる。
森田 僕は見たときに、SBじゃないという印象を持ちました。ガンガン攻め上がっていくけど、縦への突破だけじゃなく、内側に入ってゲームメークもする。今までとは違うタイプの攻撃的なSBです。
川端 ポテンシャルを感じますね。さらに水戸の西村卓朗ゼネラルマネジャーは「強気な性格がプロ向き」だと言っていました。
※後編に続く
