第102回の全国高校サッカー選手権大会が、ついに今日、12月28日に開幕する。参加48校の優勝争いにも直結する注目ポイントが、将来を期待される逸材たちのパフォーマンスだ。高校サッカーの現場で日々取材を続けているエキスパートの識者2人が全3回に分けて、対談形式でニューヒーロー候補をピックアップ。今回は最終回となる後編をお届けする。

上写真=神戸弘陵学園の岡(左)と、卒業後はゲンク(ベルギー)に加入する吉永(写真◎森田将義〈岡〉、石倉利英〈吉永〉)

[識者プロフィール]

川端暁彦(かわばた・あきひこ)/『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。

森田将義(もりた・まさよし)/テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。

※サッカーマガジン2024年2月号に掲載された記事を再構成

前編はこちら!
https://soccermagazine.jp/highschool/17675527

中編はこちら!
https://soccermagazine.jp/highschool/17675539

谷、岡、田中、加藤…各チームに好選手そろう

――知名度は高くないけどブレイクしそう、といった選手は?

川端 昌平(埼玉)のMF大谷湊斗(おおたに・みなと)は面白い2年生です。トップ下からボランチにコンバートされて、はまっています。小柄で、センスで勝負するタイプですが体も強く、ボールを奪えるので、チームともども注目です。

森田 神戸弘陵学園(兵庫)のDF岡未來(おか・みらい)を推しています。180センチと大柄ではなく、足も速くないですが、予測とコーチングでクレバーに守ることができる。左足のキックの質も良くて、ちょっと別格なので期待しています。クレバーといえば、佐賀東(佐賀)のDF田中佑磨(たなか・ゆうま)もいいですよ。右サイドから攻め上がったり、ボランチの位置でビルドアップに関与したり、いろいろなプレーができる。今年度はDF後藤光輝(ごとう・みつき)など守備陣がすべて2年生ですが、田中と後藤はキャプテンのようにしっかりしていると、蒲原晶昭監督も話していました。

川端 予選で見て面白かったのは、帝京大可児(岐阜)のFW加藤隆成(かとう・りゅうせい)。スピードとセンスがある2年生で、結果を出して名を上げたいというオーラも見えます。帝京大可児はMF吉兼伶真(よしかね・りょうま)も良い選手で、気が利くボランチです。

森田 名古屋(愛知)のMF原康介(はら・こうすけ)はプロ志向で、選手権は『就職活動』だそうです。スプリント能力がすごくて、ギュンと突破する。Jクラブのスカウトが予選を見に来ていました。

川端 もっと注目されてもいいと思うのは、青森山田(青森)のDF菅澤凱(すがさわ・とき)です。左SB、CBを経て、最近ボランチに移ったのですが、周りが見えていて体が強く、キックも正確です。

森田 今治東(愛媛)のFW大荒陽平(おおあれ・ようへい)は、とにかく速い。1試合に1回はスピードで抜け出してビッグチャンスを作ります。前線からのプレスも、相手が予測できないような速さです。

川端 インターハイ優勝の明秀日立(茨城)は、チームの要のDF山本凌(やまもと・りょう)がケガから戻ってきたのが大きい。CBで空中戦と前への強さが光ります。

森田 岡山学芸館(岡山)のGK平塚仁(ひらつか・じん)は、セービングに加えてコーチングが向上しました。京都橘(京都)のMF松本海音(まつもと・かのん)はテクニックがあるボランチ。今年度はMF宮地陸翔(みやじ・りくと)、MF西川桂太(にしかわ・けいた)を途中から2トップに置いて、チームの勢いが出てきました。

川端 前橋育英(群馬)のGK雨野颯真(あまの・そうま)は、プレミアリーグEASTで試合中のPKを4本くらい止めていて、勝負どころのセーブが素晴らしい。選手権は準々決勝まで40分ハーフ&PK戦なので、PKストッパーは勝ち上がりを左右する存在になります。

森田 四日市中央工(三重)は中盤が良くて、MF平野颯汰(ひらの・そうた)とMF山口叶夢(やまぐち・かなめ)が突破力でサイドを崩します。さらにキャプテンのMF片岡空良(かたおか・そら)が、とにかくよく走ってチームを支えている。

川端 遠野(岩手)のMF昆野翔太(こんの・しょうた)は、中盤でボールをさばける。ボランチの仕事がしっかりできる選手ですね。

森田 東海大仰星(大阪)はGK森本真幸(もりもと・まさゆき)とDF松村瞭(まつむら・りょう)が守備を引き締めます。森本は186センチ、松村は183センチで、上に強いタイプです。

――鹿児島県予選は決勝が他より遅く、12月16日に行なわれました。

川端 出場を決めた神村学園のFW名和田我空(なわた・がく)は、U-17ワールドカップ(W杯)では苦労していましたが、現地で話を聞いたときは、すごく悔しい経験をして、これを持ち帰って頑張るというギラギラ感を漂わせていました。1年生で出場した昨年度の選手権も宿題を残しています。良い意味でストライカーらしい、注目されたいというメンタリティーをピッチ上でうまく出す選手なので、二度目の選手権で輝けるかどうか。

――神村学園には昨年度のFW福田師王(→ボルシア・メンヘングラッドバッハ〈ドイツ〉)のように、卒業後に海外のクラブに加入する選手がいますね。

川端 DF吉永夢希(よしなが・ゆめき)がゲンク(ベルギー)に加入します。左利きでパワーがあり、スピードもあるSBですが、現地でゲンクの練習に参加したときや、U-17W杯で「腕一本で抑えられてしまう世界を知って、意識が変わった」と言っていました。とはいえ日本の高校生のレベルでは、そう簡単には止められないでしょう。左サイドを突破してからのクロスは、神村学園の必勝パターンです。

森田 仙台に加入するFW西丸道人(にしまる・みんと)も今年度、初参戦したプレミアリーグWESTで頑張っていましたよ。残留も決めました。得点力も高いですが、前線で体を張れる、岡崎慎司のような選手。U-17日本代表の活動で吉永と名和田がいないことが多く、背負うものが大きかったと思いますが、やらなければいけない状況で、たくましさが増していった印象です。

――今大会の組み合わせの印象は?

川端 青森山田、静岡学園(静岡)、昌平、米子北(鳥取)、大津(熊本)が同じブロック。プレミアリーグ勢を1つにまとめたような顔ぶれになりましたね。

森田 そのぶん勝ち上がっても消耗が激しそうで、そうなると意外な伏兵が上位に来るかもしれません。

川端 インターハイは明秀日立、前回の選手権は岡山学芸館と、どちらも初の日本一。みんなに夢を与えたはずで、じゃあ俺たちも、と思っているチームは多いでしょう。

――最後に、今大会への期待を。

川端 負けた直後は悔しいでしょうが、10年後に思い出して「あのとき、俺は頑張ったな」と全員が言えるような大会であってほしいです。

森田 予選を取材していて、声出し応援が戻ってきて、やっと選手権の日常が帰ってきたと感じました。

川端 応援は、いいよね!

森田 『誰かのために』が大きな力になり、誰かのために頑張っている姿が、別の誰かの力になる。それをテレビ中継や会場で、いろいろな人が感じるのが選手権の良さの一つだと思うので、今回もたくさんの人に伝わってほしいです。

※帝京大可児の吉兼伶真の「吉」は、正しくは「土」の下に「口」


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