上写真=表彰台で並ぶ内田篤人と大岩剛監督(写真◎Getty Images)
■2020年1月1日 第99回天皇杯決勝 @東京・国立競技場
神戸 2-0 鹿島
得点:(神)OG、藤本憲明
国内大会の決勝では2006年以来の敗戦
鹿島らしくない。天皇杯決勝を見て、そう感じた人は多かったのではないだろうか。序盤から神戸にボールを支配され、前半だけで2失点。後半から伝統の4-4-2のシステムを捨て、3バックに変更して反撃を図ったが最後までゴールは生まれず、21個目となるはずだったタイトルを目の前で逃した。
鹿島が国内大会の決勝で敗れたのは、2006年のナビスコ杯(現・ルヴァン杯)以来のこと。この日の決勝でキャプテンマークを巻いて出場した永木亮太は、「自分たちが20冠を築いてきたわけではないし、これまでの選手がそういうふうに作り上げてきた中で、変な自信を持っていたのかもしれない。決勝に来たら勝てるんだ、という慢心もあったのかもしれない。今年は無冠で終わってしまったので、それは重く受け止めないといけないと思います」と、恥じるように視線を落とした。
神戸に対して、戦術面でも後手を踏んだ。後半の3バックでの戦いは「練習でも1回もやったことがない」(永木)もので、大岩剛監督の采配は急場凌ぎの感が否めない。相手と同じシステムに変更し、いわゆるミラーゲームに持ち込んでから盛り返したものの、前半の45分を取り戻せなかった。
ただ、神戸とは約1カ月前の11月30日(J1第33節)に対戦し、ホーム最終戦で屈辱の敗戦を喫したはず。その前節の広島戦(11月23日)や、天皇杯準決勝の長崎戦(12月21日)でも同様に3バックの相手に苦戦している。ボランチの三竿健斗は、「3バックのミスマッチに対して、そこの対応でここ最近は上手くハマっていなかった」と課題を克服できなかったことを認め、「今日のみっともない試合を来シーズンに生かせるように、何がいけなかったのかを自分でしっかり整理したい」と、沈んだ表情で語った。
決勝をベンチから見守ったチームキャプテンの内田篤人は、敗戦の理由は「一つじゃない」とする。そして無冠に終わった今季について、シーズン途中に主力(安部裕葵、安西幸輝、鈴木優磨)が相次いで抜けた影響を問うと、「だいぶ人も変わった、というのは言い訳になる」と断じ、次のように続けた。
「それでも勝ってきたからね。俺も海外に出て行ったし、来シーズンも途中で出て行くかもしれない。お金をかけて良い選手を連れてくれば勝てる、という流れが仮に今後できてきたとして、いまのこういう風にアントラーズらしさでぶつかっていくのか、ちょっとずつ変えていくのか、というのは……選手の俺の判断じゃない(笑)。上の判断だよ」
いつものように俯瞰した視点でチームを見つめつつ、内田はまた独特の表現で名門復活のカギを挙げる。
「強くなって勝てる、というものじゃないんだよね。俺が思うに、勝って強くなる。結果が先なんだよ。勝たないと強くならない。強くなって勝つんじゃない」
退任が発表された大岩監督の後任には外国人監督の招聘が確実視され、また今オフには大型補強も噂される。昨年から経営母体も変わり、国内屈指の名門、鹿島アントラーズが変革の時を迎えているのかもしれない。
取材◎多賀祐輔 写真◎Getty Images、福地和男