※写真上=決勝ゴールを決めた内田。終盤にはキャプテンマークを巻いた
写真◎福地和男/BBM
■2018年10月3日 AFCチャンピオンズリーグ準決勝第1戦
鹿島 3-2 水原三星(韓国)
得点者:(鹿)オウンゴール、セルジーニョ、内田篤人 (水)オウンゴール、デヤン・ダムヤノヴィッチ
ACL決勝に駒を進めるためにも、ホームで先勝したい鹿島。しかし、試合開始直後の2分にCKから失点すると、6分にもデヤン・ダムヤノヴィッチにゴールを許し、序盤で2点のビハインドを負う。反撃に出る鹿島は21分にセルジーニョのクロスが相手のオウンゴールを誘発し、1点を返して前半を折り返す。後半はさらに攻勢を強め、84分にセルジーニョが同点ゴールを奪うと、アディショナルタイムには内田篤人がゴールネットを揺らし逆転。鹿島が3-2で第1戦を制した。
ターニングポイントは2失点目の直後。「1回ちょっと我慢しよう」
激闘を戦い抜いた疲れもあるのか、試合後のミックスゾーンに現れた内田篤人の表情は浮かない。
「負け試合だった。ベスト4(のチーム)の戦い方じゃない。どうしても1点取られると、ああなるんだね……」
内田が指摘するのは、立ち上がりの2失点について。わずか6分間で連続失点し、「やっぱりDFなので、無失点のほうがよかったですね」と、悔しさをにじませる。
ただ、試合中は失点を悲観している余裕などない。2失点目の直後には、ピッチ中央に鹿島の選手たちを集めた。
「普通は0-2になったら、点を取りにいかなければいけないんだけど、『1回ちょっと我慢しよう』、『ディフェンスをしっかりしよう』と、後ろの選手に言いました」
2点のビハインドを負ったのだから、選手たちは普通ならば、焦って、攻め急いでいたかもしれない。だが、内田の計らいによって、チームは落ち着きを取り戻した。MF三竿健斗は「そこでみんなで話せたことで、(チームが)バラバラにならなかった。それが良かったと思う」と振り返る。
GKクォン・スンテを中心にその後のピンチを防いだ鹿島は、21分と84分に得点を奪い同点に追いつく。そして、終了直前の90+3分に内田の逆転ゴールが決まり、決勝進出に王手をかけた。
内田は決勝点となった自身のゴールについて、「最後の最後だから(前線に)上がっていただけ。本当は(鈴木)優磨にヘディングをさせるために、(鈴木をマークしていた)相手をブロックしていたんですけれど、そこにたまたまボールがこぼれてきた」と、淡々と話すも、その“たまたま”が勝敗を分けることを知っている。だからこそ、第2戦に向けて次のような言葉を発する。
「運とかチャンスというのは、なかなか転がってはこないですけれど、チームとして、そのときが来たら、(勝つために)つかんで、離さないことです」
3週間後に控える敵地での第2戦も、勝利を手にすることは一筋縄ではいかないだろう。それでも、鹿島には勝ち方を知る男がいる。決して満足できる試合内容でなくても、最終的に勝利をつかむ――。そんな常勝軍団としての勝負強さが戻ってきた手応えを、内田自身も感じている。
「0-2になったら負けだよ、普通はね。でも、その状況でも負けなかった。(チームに)勝ち癖がついている」
百戦錬磨の右サイドバックとともに、深紅の戦士たちはアジアの頂点へと邁進する。
取材◎小林康幸/サッカーマガジン