アジアカップでも手を焼いたカウンター
オーストラリア戦でも脅威になったカウンターは、変わらず警戒しなければならない。日本はアジアカップでもバーレーンの速攻に手を焼いた。右ウイングのアリ・マダン、左ウイングのマルフーン、そしてトップ下のカミル・アル・アスワドの3人はいずれもスピードがあり、長くともにプレーしているだけあって連携も成熟している。ポゼッションで相手を押し込んでいたとしても、ボールを失った直後の彼らの飛び出しには注意が必要だ。
バーレーンが守る際にはサイドからの攻撃を受ける際に、ディフェンスラインの人数を自在に変化させる。というのも4-2-3-1の1トップとトップ下を除いた選手たちはマンマークで守る傾向が強く、ボランチや両ウイングも目の前の選手の攻め上がりに応じてディフェンスラインに吸収される場面が多く見られた。スペースをケアするよりも1対1の局面を多く作ろうとする相手をいかに剥がしていけるかは、日本にとって重要なポイントとなる。
もし歴史的な勝利を収めた初戦から変化をつけてくるとすれば、プレッシングの開始位置だろう。オーストラリアはポゼッションがあまりスムーズではなく、ハーフウェーラインを越えられなければ大きな問題は起きなかった。一方、日本は3バックの全員が高い配球能力を備えているため、あまり自由にボールを持たせたくない。そこでバーレーンは3トップを日本の3バックに1人ずつつけ、ディフェンスラインからの組み立てに制限をかけようとするかもしれない。
タラジッチ監督はアジアカップからメンバーを大きく入れ替えており、オーストラリア戦でベンチ入りした23人のうちアジアカップに出場していたのは14人にとどまった。とはいえ無闇に若返りを進めているわけではなく、30歳以上のベテランを複数呼び戻して選手層を厚くし、目の前の試合での勝利を愚直に追い求めていく方向性のようだ。
すでに中盤の柱となった35歳のセントラルMFアリ・ハラムをはじめ、10番を託された34歳のアブドゥルワッハーブ・アル・マールード、33歳のFWマフディ・ハサンといった新監督によって再評価された経験豊富な選手たちは、ゲームコントロールの面でも好影響をもたらすだろう。
かつて2006年ドイツワールドカップや2010年南アフリカワールドカップの予選では大陸間プレーオフまで進み、本大会出場の一歩手前まで近づいたこともあるバーレーン。当時の戦いを経験した選手もまだA代表に招集されており、ワールドカップ出場への想いは強い。タラジッチ監督も「今は本当に成し遂げられると信じている」とアジアからの出場枠が拡大した今回こそが初出場のチャンスと捉えている。
グループ内の序列を覆して世界に挑む権利をつかむべく高いモチベーションで向かってくるバーレーンに、日本代表は現実を突きつけて勝ち点3を持ち帰ることができるだろうか。過酷な気候の中で戦うアウェーゲームは極めて難しい90分間となるに違いない。
文◎舩木渉