上写真=オーストラリアを破り、U-21日本代表は3位で大会を終えた(写真◎AFC)
文◎飯尾篤史
ライバルと真剣勝負できた意味
U23アジアカップ2022の3位決定戦翌日、U-21日本代表を率いる大岩剛監督が、前日までの勝負師の顔とは異なる温和な表情で、心境を口にした。
「ホッとしていますね」
5月30日にウズベキスタンのタシケントに到着して以来、日中40度に迫る灼熱の地で、中2日の試合間隔で6試合を戦い抜いた。目標としていた優勝には手が届かなかったが、銅メダルを獲得。さらに、「我々のスタイル、コンセプトを高めるうえで貴重な6試合だった」と総括したように、チーム立ち上げから3か月で迎えた今大会で、チーム作りを加速させることができた。
そして何より、大きな負傷者を出すことなく日程を終えた。そうした事実が、指揮官に安堵の感情を抱かせたに違いない。
一方で、今大会には困難な一面もあった。
「新型コロナウイルスの陽性者が出て、昨日まで一緒に行動していた選手、スタッフが突然いなくなる。大会は終わっているのに、選手、スタッフ全員の顔を見ていないので、複雑な感じですよね。寂しさというか……」
大会期間中に選手5人、スタッフ2人に陽性反応が出て、チームの活動から離れることになった。出場停止の選手もいたため、ウズベキスタンとの準決勝、オーストラリアとの3位決定戦は18人のメンバーでやり繰りしなければならなかった。キャプテンの藤田譲瑠チマも「コロナで一部の選手やスタッフがいなくなり、生活のリズムが変わってしまった」と、苦しいチーム状況を打ち明けていた。
突然、出番が回ってきた選手もいただろう。期せずして連続出場となった選手もいたはずだ。しかし、コロナ禍のために約2年間、国際大会が開催されず、国際経験の乏しい若き日本代表にとっては、こうしたアクシデントも貴重な財産になったはずだ。もちろん、アジアの国際大会を戦い抜いたという経験自体も――。
「アジアのレベルは非常に上がっていると感じました。アジアの中でも強いと言われているチームと対戦できて、実のある大会でした」
指揮官はそう振り返る。グループステージでは中東の雄であり、今大会の覇者となったU-23サウジアラビア代表と対戦。決勝ラウンドでは永遠のライバル・U-23韓国代表、近年メキメキと力をつけている開催国のU-21ウズベキスタン代表、A代表の好敵手であるU-23オーストラリア代表と激突した。
今大会の傾向としては戦術的なチーム、欧州的なチームと言い換えてもいいが、ボール保持とその際の立ち位置にこだわり、“攻守の設計図”を備えている参加国が多かった。
前述した4チームはいずれもそうした特色を持っていたが、若き日本代表もボールの動かし方やビルドアップの形、プレッシングの形や全体の立ち位置にこだわり、優位性を保ちながらライバルたちに対抗した。