成長を見るととてもうれしい気持ちになる（リーガル）
ケビン・オーエンス
ーー自らが育てた選手が、世界レベルの選手となり、レッスルマニアやプレミアリーグで活躍するようになるのを見るときには、どう感じますか
カー 例えば、グレン・ジョンソン（元イングランド代表）。若い頃のグレンは目立ってうまい選手ではありませんでしたが、彼は必要な基礎がしっかりとできている良いアスリートでした。当時はグレン・ローダーがウェストハムの監督で、チームはうまくいっていませんでした。選手の何人かは内向的で、チームは負のスパイラルに入っていた。監督は私に「トニー、グレン・ジョンソンは上のチームでプレーできるか？」と聞いてきました。私は「試すべきだ。その状況においてみないと何も分からないよ」と答えました。そして彼はグレンを試合に出し、グレンは恐れることなくプレーして、うれしいサプライズを起こしました。
彼がボールを持って前線を突破し、ディフェンスの裏を突くたびに起こった観客のリアクションを、その場にいてとても誇りに感じたものです。私には満足感がありました。
自分が育てた選手がチームにインパクトを与える姿を見ると、非常に大きな誇りを感じます。それは私自身にだけではない。彼の成長には多くの人々やスタッフが関わり、貢献しているからです。私はそのプログラムの一部に過ぎません。それは常に誰か1人の功績ではないと言うことです。まずは自分の信念を持つべきで、そしてその哲学を理解して若い選手たちに習慣として植え付けることができるスタッフが必要です。
リーガル 選手が何かを成し遂げたのを見ると、まずは「あの日の私の目に狂いはなかった！」と素直にうれしい。いつでもその選手たちを誇りに思い、成し遂げたことと同時に人としての成功もうれしく感じます。どんなスポーツ、エンターテインメントでも、成功するためにはさまざまな要素があり、時に心を乱すようなことを言ってくる人もいるでしょう。選手たちとは多くのものを共に乗り越えてきた。もちろん良い時も悪い時もあります。ただ私がWWEで選手育成の仕事を得られたのは、長く経験を積み、その中で多くの失敗をしてきたからです。選手たちとは、2年、3年と積み重ねて来た時間が無駄にならないように、自分の経験を共有します。彼らが成功するのを見ると、とても幸せな気持ちになりますね。
ーー選手育成において、あなたの中でのハイライトを挙げるとすると？
リーガル WWEのタレント育成部門に過去10年携われていることがハイライトです。自分が発掘、または育成した選手が成功するのを見るのは最も誇りに思えることです。ダニエル・ブライアンが世界チャンピオンになったことはその一つの例です。ケビン・オーエンスもその1人。私は、彼が観客と一体になる能力に長けていることを知ってましたが、彼は、会社や観客が求めるタレントの理想像からはかけ離れていました。トライアウトを受けた時期は彼がうまく行っていなかった時期でもあり、誰もが彼に期待はしていなかった。しかし、彼が合格さえすれば輝かせることができると確信していました。
私は彼に「マイクパフォーマンスの時は英語だけではなくフランス語でもやってみるといい」と、アドバイスをしました。そして彼がコーチたちの前でマイクを持つと、全員の口がぽかんと開いて、みるみると大きく目を見開いていくのを目撃しました。そして終わると全員が「こいつは凄いぞ！」と言い合っていました。彼のように通常ではチャンスがない選手が成功するのを見るのは、非常に喜ばしいことです。この仕事の醍醐味と言えますね。
カー 人生において、自分が本当に好きなことをしていた期間があることに非常に感謝しています。どの選手にも思いがあり、それぞれストーリーがありますから、選手を選ぶことはできません。荒れた生活をしていた子どもたちに、悪い習慣を止めさせ、習慣を変えようとしたこともハイライトの一つでした。ウェストハムでの選手育成の黄金期とも言われた時代に、そこに居て、仕事に携われたことは幸運でした。それは私に充分な喜びを与えてくれましたし、私にはそれ以上は必要ありませんでした。
