日本時間4月11日(日)と12日(月)に開催される「レッスルマニア37」を前に、世界最大のプロレス団体『WWE』のウィリアム・リーガルと、イングランド・プレミアリーグのウェストハム・ユナイテッドFCで長年にわたり育成に携わった名指導者トニー・カーが語り合った。テーマは「どのように才能ある選手を見つけ、世界中で愛されるスターに育てるのか」。育成のプロフェッショナルによる異色対談が実現した(文・写真/(C)2021 WWE, Inc. All Rights Reserved.)。

観客は異端児に愛情を注ぐ(トニー・カー)

画像: 前列左から5人目がランパード。後列右がトニーカー、右から4人目がファーディナンド

前列左から5人目がランパード。後列右がトニーカー、右から4人目がファーディナンド

ーー将来有望となるサッカー選手やレスラーを育成するとき、お二人の役割として最も重要な要素は何だと考えますか。

カー それぞれの選手の能力を信じ、その選手たちが限界をつくらないように、常に働きかけることです。日々成長を続けるよう常に後押しすることが大切だと考えます。彼らよりも年上で優れた能力を持つグループと対戦させるのは、そのためです。彼らに通常より多くのメニューを求めることもありますが、その反応を見つつ、常に地に足がついた状態でいるように心がけます。
 というのも、その選手に対し、「お前はもうすごい選手だ」と言う人たちが存在するからです。それは若い選手たちに過剰な自信を与えてしまうことになりかねない。その選手が自分自身で『もう自分の能力の最高点に達した』と考えている場合には、その言葉を受けて入れてしまうでしょう。だからこそ、われわれは彼らにチャレンジさせ続け、自分の立ち位置を認識させ、ハングリーな状態でいさせるのです。
 フランク・ランパードが若かった頃は、その逆でした。彼は試合でも信じられない動きをしましたが、ハングリー精神も信じられないものがありました。彼はいつでもより多くのことをやりたがりました。そして、自分のパフォーマンスに満足することは無かったのです。だからわれわれは、彼に対し「お前は良い選手だ」と言い続け、他の選手とは逆のことをしました。

リーガル トニーが話したことは、われわれにも全て当てはまります。それに加えて、WWEでは選手育成において、まず固定観念を持たないことが重要と考えています。レスラーに関しては、最初の印象で「良い選手」とは言えないことが多々ある。しかし、彼らが観客と一体になる姿を見ると、私がどう考えようが、その事実に対して何がそうさせるのか、興味を持たざるを得ません。
 それを理解するために何年もかかることがありますし、あらゆるタレントが違った文化、国でパフォーマンスする姿を見て理解できるケースもある。世界的な視野を持つ必要があるのです。あるレスラーを見て、アメリカの観客とは一体になれないと感じることがあっても、そのタレントが南米や日本、あるいはイギリスでお客さんの支持を得ることがある。そんなときは、チャンスを与えるタイミングを待ち、持てるものを全て出し尽くすための正しい瞬間を模索するのです。時としてそのタイミングは唐突で、会社(WWE)ですらその選手に注目していない場合もあって、「これは誰?」と聞かれることもあります。そういうときに私は「見たか? こいつは本当に頑張って一生懸命、努力してきた。その結果だ」と自信を持って言うのです。

ーーウィリアムはWWEの選手育成において、「カリスマ」という要素を重要視していると言います。サッカー選手の育成において、「カリスマ」という要素は重要ですか。

カー 私も「カリスマ」と「キャラクター」は重要な要素だと思います。ファンにとって、そのような選手は試合で常にファンの思い描く通りにプレーをするわけではなく、異端児とも捉えられます。私の頭にすぐ思い浮かぶ選手にパオロ・ディカーニオ(イタリア/FW )がいます。特に彼がウェストハムに来たときには、間違いなく異端児でした。
 監督は、彼がゲームプランにはないあらゆることを独創的にやるのでやきもきしたと思います。でも観客は彼を愛していました。観客は、そういう独創的な選手を愛するものです。最近の選手で言えば、アストンビラのジャック・グリーリッシュがその1人です。彼も独創的なプレーをし、若き日のジョー・コールを少し思い起こさせる。ファンは「ジャックのここはいいけど、あそこはダメ」のような話もしていますが、観客は彼を愛しています。間違いなく、サッカー界には彼らのような選手に対する需要がある。なぜなら、ファンはみんな同じような選手になることを求めていないからです。選手に少しのカリスマ性、個性的なキャラクターを求め、異なるプレーをする選手を望むのです。そしてテレビの視聴者をも引きつけ、そのプレーで腰を浮かせるような選手は、いつの時代も貴重な存在と言えます。


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