またも決勝進出を阻まれた…。魅力的な攻撃サッカーで沸かせた帝京長岡(新潟)のキャプテン、川上航立。準決勝で2得点を挙げる活躍だったが、山梨学院に屈した。全国高校サッカー選手権準決勝で敗れたキャプテンが語るチームへの思い。

上写真=川上航立は終始、笑みを絶やさなかった。帝京長岡のサッカーを心から楽しんだ(写真◎小山真司)

■2021年1月9日 全国高校サッカー選手権準決勝(@埼玉スタジアム)
山梨学院 2-2(PK3-1)帝京長岡
得点者=(山)石川隼大、一瀬大寿
    (帝)川上航立2

「見ているところが同じでした」

「僕が、というより、川上航立がこのチームを引っ張ってきた、本当にシンボルであったので、緊張する若い選手がいる中でプレーで引っ張って声をかけてというところは大変感謝していますし、プロ選手を目指して頑張ってもらえればと思います」

 山梨学院にPK戦で敗れて、またも決勝に進めなかった帝京長岡のこの1年を振り返って、古沢徹監督はこう話した。「教え子」というよりは、一人の大人として川上を認めてきたことがよく分かるメッセージだ。

 もちろん、川上からすれば「あの人がいなかったら、自分たちの代はここまで来ることができませんでした」と感謝しかない。監督と選手、指導者と教え子という関係よりも深い。

「親のような感じで真剣に、1秒たりとも気を抜くことなく向き合ってくれました。それに対して3年生もあの人の行動に愛情があるんだなと認識できたので、ここまで来ることができたんじゃないかなと思います」

 そんな愛情のやり取りが軽薄な美談で終わることがないのは、帝京長岡のフットボールが示している。昨年に引き続いてベスト4の壁を敗れずに、川上も「自分たちの実力不足で負けてしまったという印象です」と肩を落として話したが、複数の選手たちが同じ絵を描いて連動し、高い技術を用いてボールとともにプレーする戦いは、今年も多くのファンを魅了した。

「この大会でプレーしながら、自分たちがやって来たことは間違ってなかったと思いました。たくさん失敗もしてきましたけど崩せて、神戸弘陵戦でも取れましたし、失敗してもやってきたことは間違っていないし自信を持っていこうというところが全員一致していた、というか、見ているところが同じでした」

 前回大会では準決勝で青森山田(青森)に1-2で敗れたが、今回は試合結果としては敗戦ではなく「2-2のドロー」だ。半歩だけかもしれないが、前に進んだ事実は確かに残る。

「去年、経験させてもらったことで気持ち的にも余裕あると感じていました」

 だから、反撃の1点目も難しいショートバウンドをしっかり叩いてニアサイドのトップコーナーに突き刺すことができたし、同点に追いつくPKもど真ん中に浮き球で緩やかに決めることができたのだろう。

「ここに来てよかったと心の底から思いますし、古沢先生は僕が引っ張ったって言ってくれましたけど、僕がわがまま言ってみんなが受け入れてくれて、やりすぎじゃないかというぐらいやっていたんですけど、みんな愚痴も言わずについてきてくれました。日本一になれなかったことだけが後悔です」

 2-1履正社、3-1神戸弘陵学園、2-1市立船橋、2-2(PK1-3)山梨学院。川上が、帝京長岡が今年の選手権で見せたのはまた、多くの人の記憶に残る素晴らしいフットボールだった。


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