1965年から1992年まで日本のサッカーはJSL(Japan Soccer League/日本サッカーリーグ)を頂点として発展してきた。連載『J前夜を歩く』ではその歴史を振り返る。第26回は日本サッカーの発展を加速させたカズの帰国について綴る。

読売クラブが4年ぶりに優勝

画像: 第27回JSL(91-92)も読売クラブが優勝し連覇。カズはMVPに選ばれた(写真◎サッカーマガジン)

第27回JSL(91-92)も読売クラブが優勝し連覇。カズはMVPに選ばれた(写真◎サッカーマガジン)

 第1試合では3連覇を狙う日産が東芝と1ー1で引き分ける苦しいスタートを切ったのに対し、読売クは順調な仕上がりを見せる。その中心となったのはこれがリーグ初試合となったカズだった。ここまでにJSLカップなどですでにプレーし、もう一つ周囲とかみ合っていなかったが、「本番」では違った。

 開始6分にはカズのCKから相手DFのクリアを拾った菊原志郎が、鮮やかなミドルシュートを決めて早くも先制。22分にはPKを得てカズが落ち着いて決め、日本のトップリーグでの初ゴールとして2-0。後半に入っても読売クの攻勢は続き、65分にはカズのクロスを武田修宏がオーバーヘッドキックで決めた。さらにその3分後にもカズのパスから流れたボールをラモス瑠偉が角度のないところから決めて4ー0とし、開幕戦を快勝で飾った。

 4得点すべてに絡む活躍をみせ、上々のスタートを切ったカズだが、「今日の出来は、60点ぐらい。ブラジルにいたときも、徐々に調子を上げていったから、初戦としてはまずまず」(サッカーマガジン1991年1月号)と自己採点は厳しかった。それでもブラジル帰り、本場のプロで鍛えられたプレーは自信に満ちあふれていた。読売クというブラジルサッカーをベースにしたチームに加わったことも彼の良さを引き出していただろう。

 その相乗効果が良い方向に進んで読売クはこのシーズン首位を独走、最後は3試合を残して4年ぶり4回目の優勝を決める。DF加藤久、都並敏史、堀池巧、MFラモス、FW戸塚哲也、武田といった日本代表をそろえた陣容に、カズというパズルのラストピースを加えた読売クは、優勝にふさわしいチームとして完成した。

 翌シーズン、最後のJSLとなった91ー92シーズンも読売クで連覇を果たし、ヴェルディ川崎となって92年ナビスコカップ、93年Jリーグの開幕へとつなげていく。日本代表としても92年アジアカップ初優勝に大きく貢献し、ワールドカップ出場は果たせなかったものの日本が本気で目指すべき舞台であることを率先して示した。その存在は1選手に止まらず、日本サッカーのプロ化と劇的な発展を象徴していた。

著者プロフィール/くによし・よしひろ◎1954年11月2日生まれ、東京出身。1983年からサッカーマガジン編集部に所属し、サッカー取材歴は37年に及ぶ。現在はフリーランスとして活躍中。日本サッカー殿堂の選考委員も務める。


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