上写真=85分に衝撃の逆転ゴールを決めた静岡学園の中谷颯辰(5番)。超満員の埼玉スタジアムが揺れた(写真◎福地和男)
主将と指揮官、ベンチ前の握手
11分に先制した青森山田は、33分に主将のMF武田英寿がPKを決めて追加点。ベンチのチームメイトの下に駆け寄って笑顔を見せたが、再開のキックオフに備えて自陣に戻る際にベンチ前で黒田剛監督とがっちり握手をかわした。『これからだぞ』『分かってます』。そんな会話が聞こえてくるようだが、実際にはこの後、静岡学園の猛反撃が始まる。
2人が見つめたボールの行方
前半のうちに1点を返した静岡学園は、後半も優勢に試合を進める。61分にはゴール前でFW加納大(左)がパスを受けて反転、振り向きざまに左足でシュートを放った。加納は、マークしていたDF藤原優大は、ボールの行方を見ながら何を思ったのか。次の瞬間に逆サイドのネットが揺れ、静岡学園は2-2の同点に追い付いた。
走り出したのはゴールの裏から
85分、静岡学園はMF井堀二昭のFKをファーサイドで中谷がヘッドで合わせ、ついに3-2と逆転! シュート後に勢い余ってゴールラインの外側に転がり込んだ中谷が、喜びのダッシュを始めたのはゴールの裏からだった。殊勲のDFは喜びながら自陣に走って戻り、すぐに次のキックオフに備えた。1点目と合わせて2得点の活躍を、試合後は「夢のような感じ」と振り返った。
連覇への望み、キッカーの祈り
前半に2点のリードを奪って連覇に近づいたかと思われた青森山田だが、まさかの逆転を許してしまう。1点を追う終了間際、敵陣でFKのチャンスを得ると、キッカーのMF古宿理久はセットする前のボールに祈りを捧げた。自分のキックから、連覇への望みをつなぐ同点ゴールを――。FKからの先制点のアシスト再現を狙ったが…。
残り時間わずか、気迫の守り
逆転した静岡学園だが、青森山田は直後からFKやロングスローをどんどんゴール前に送り込み、パワープレーでゴールをこじ開けようとした。だが静岡学園もゴール前に人数を割き、懸命にはね返す。ピンチを防ぐたびに、主将のDF阿部健人が、2得点のDF中谷が雄叫び! チーム一丸、気迫のディフェンスで相手の猛攻に立ちはだかった。
文◎サッカーマガジン編集部 写真◎小山真司、山口高明、福地和男、近藤俊哉