上写真=なでしこジャパンを率いる高倉麻子監督(写真◎Getty Images)
■2019年11月10日 国際親善試合
日本女子代表 2-0 南アフリカ女子代表
得点:(日)熊谷紗希、菅澤優衣香
自分たちのリズムを作れなかった
決定機の数で日本は南アフリカを上回った。ボールを保持し、相手を押し込む展開に持ち込んだ。前半から常に優位な状況にあったが、ゴールネットを揺らしたのは前半の2回だけ。その点について、指揮官は率直な言葉を口にした。
「2-0という結果ではありましたけれど、私たちが目指すというか、思うようなリズムを作れなかったというのが正直な印象です。南アフリカの選手個人が持っている球際の強さであったり、一瞬のスピードというところで、本当に細かいシーンですが、自分たちのボールにし切れずに、ボールを持たされながら最後のところではやらせてもらえなかった。選手は前向きにゴールを目指し続けてくれましたが、最後のところのクオリティというのはワールドカップのときから含めてずっと課題です。もう少し迫力を持って、ミドルシュートであったり、大胆なクロスであったり、そういうところを出してくれれば」
シュート数は南アフリカの2本に対し、日本は17本。ポゼッションも57・6%と上回る。数字も日本の優勢をはっきりと示す。だが、指揮官の指摘通り、ラストパスやクロスの質、シュート精度に問題があったのは確かだった。リズムが作れないため、ミスからカウンターを浴び、危ないシーンも作られた。
「菅澤(優衣香)、岩渕(真奈)、長谷川(唯)あたりが絡んでいくと(相手を)はがせるシーンもありましたけど、おおよそちょっと引っ掛かり気味なところがあった。相手の足が伸びてくるところであったり、瞬間的にボールに反応して来るという部分に対して、最後までそれをかわすだけのコンビネーションは作ることができなかった。その中でも、ミドルシュートであったり、クロスであったりというのは選手には要求していますけれども、それをピッチで表現し、結果に結び付けてシュートで終わることはまだできていない」
この日のゲームに関して言えば、セットプレーからの得点(=1点目)など収穫もあったが、攻撃面に関して高倉監督の評価は厳しいものだった。得点力の向上が一朝一夕にいかないことは指揮官も重々承知している。コンビネーションを深めること。ラストパスの精度を上げること。シュート意識をさらに高めること。それを今後も愚直にやり続けるしかない。
「アフリカ勢と試合をやることができて、選手からはやりにくかったという声が聞こえているので、これを大事なチームの財産にして、積み上げていけるといいと思います」
試合後の会見で、このように今回の試合の意味を語った高倉監督。岩渕も指摘していたアフリカ勢「独特の間合い」い触れた経験を、チームとして今後に生かしたいところだ。
五輪メンバー入りのカギは万能性
南アフリカ戦では、10月のカナダ戦同様、五輪の登録選手数が18人に限られる点を踏まえた上で『選手の万能性』についてもテストした。酷暑の中、限られた人数で決勝まで6試合を戦うことを想定し、複数ポジションでプレーできる選手が必要だとの判断が指揮官にはある。
本来はアタッカーの遠藤純が左サイドバックを務め、先のカナダ戦で左サイドバックは務めた宮川麻都はボランチに入った。とりわけ遠藤は不慣れなポジションであり、守備面では相手に空けたスペースを突かれる場面も散見したが、攻撃面ではクロスや推進力という持ち味を示した。
「(遠藤は)慣れないポジションではありましたけども、前めのところでプレーしてほしいというところではチャレンジはしてくれたかなと思います。まだまだ、攻撃のところでは彼女のクロスに入っていく部分やシュートというのは、まだまだレベルアップしていけるかなと思います」(高倉監督)
五輪本大会まで残り8カ月。10月のカナダ戦を前にした会見で指揮官が話していた通り、今後は新しい選手を発掘していくよりも、すでに招集経験のある選手の中からベストなメンバーを選び、最適な形を探っていくことになるだろう。その中でメンバー選考において、ポイントの一つになるのが万能性だ。複数のポジションでプレーできることは、とくに当落線上にいる選手にとっては大きな強みになる。
来月、韓国で開催される『EAFF E-1サッカー選手権』でも複数のポジションで試される選手がいるかもしれない。そこで評価を得ることができれば、メンバー入りに大きく前進することになる。
取材・構成◎サッカーマガジン編集部