Jリーグワールドチャレンジ2019で川崎フロンターレがイングランドのチェルシーと対戦。1-0で勝利を収めた。相手はプレシーズン中であり、来日して間もないこともあってベストコンディションではなかったものの、J王者として『ホーム』できっちり勝ち切り、3連覇を目指すリーグ戦にも弾みをつけた。この日、およそ1カ月ぶりにピッチに立った馬渡和彰は「人生で一度対戦があるかないかの相手との試合に勝てたことは、素直にうれしい」と振り返り、シーズンの後半戦に向けて「手ごたえ」を口にした。

上写真=後半から出場した馬渡和彰(写真◎福地和男)

■7月19日 Jリーグワールドチャレンジ2019
 川崎F 1-0 チェルシー
 得点者:(川)レアンドロ・ダミアン

復帰後は消極的な自分がいたと思う(馬渡)

 今季からJ1王者チームに加わった馬渡和彰は、6月17日の名古屋戦を最後に試合から遠ざかっていた。負傷によって戦列を離れていたこともあるが、練習に復帰後も出場機会を得られず、ベンチにも入れない日々が続いた。

 そんな状況を打破するために強い決意を持って臨んだのが、この日のチェルシー戦だった。出番を得たのは、後半から。右サイドバックとして約一カ月ぶりのピッチに立つと、自分の持ち味を出すべく全力でプレーした。

 強い思いが空回りし、対面したチェルシーの左MFクリスチャン・プリシッチに入れ替わられて背走する場面もあった。だが、最後は足を伸ばしてクロスを阻止。「あれは向こうが僕の足に当ててくれただけですよ(笑)」と謙遜し、「入れ替われたのは僕がまだまだ成長しなければいけない部分」と反省を口にしたが、最後まであきらめずにプレーするという気持ちを見せたプレーでもあった。

 攻撃面では、中村憲剛が登場した試合の終盤に見せ場を作っている。中村の浮き球パスに反応して最終ラインの裏に抜け出すとペナルティエリアの右からゴール前に正確なクロスを供給。レアンドロ・ダミアンのヘッドを導いた。シュートはクロスバーを直撃し、惜しくもゴールとはならなかったが、「攻撃面で持ち味を出したい」と考えていた馬渡にとって、手ごたえを得るプレーになった。

 今季、川崎Fの右サイドバックは『適任者不在』の状況が続いている。この日は昨季のボランチの主力である守田英正が先発を務め、馬渡が不在だったリーグ戦の数試合は、本来左サイドバックの車屋紳太郎や登里享平が同ポジションを担った。右サイドバックを本職とする馬渡にとって、その状況は悔しかったに違いない。

「もちろん、そういう思いはありましたし、(ケガから)復帰してからもなかなか出られない時期が続いて、数試合はベンチ外になって、正直、自分をネガティブにとらえかけたこともありました。ただ復帰後は、確かに消極的な自分がいたと思うし、それで出られないのは自分のせいなんです。だから今日はそうじゃないところをプレーで示したいと思っていました。今日みたいな、こういう自分のストロングな部分を出していって、それで出られないのなら仕方がないですが、(これまで)そうではなかった。そういう意味でも、自分を出せた今日のプレーというのは一つ、良いきっかけになるかなと思っています」

 この日のプレーだけで状況を一変させることができるとは、本人も思ってはいない。ただ、再び前を向くきっかけをつかんだ実感がある。

「川崎の右サイドは馬渡と言ってもらえるように、頑張っていきたいと思います」

 主戦場に帰ってきた背番号17。自分の強みと弱みを見つめ直し、再びポジション争いに挑む準備が今、整った。王者チームの右サイドバックで先発の座をつかみ、チームに貢献するーー。開幕前に自身に課したミッションをコンプリートするために、馬渡はここからまた、力強く歩き出す。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男

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