上写真=森保ジャパンのゴールマウスを守る東口(写真はウルグアイ戦/Getty Images)
森保一監督率いる日本代表のゴールマウスを守る東口順昭に、発足から3カ月を経た日本代表のこと、そして先日、今季限りの現役引退を発表した川口能活について聞いた。
相手に引かれても楽しみ
ベネズエラ戦の前日練習を終えた守護神は、記者から指揮官がウルグアイ戦のメンバーがベースになると話していたことを伝え聞くと、今回の一戦へのスタンスを明確に口にした。
「しっかり積み上げていくしかないと思います。(試合は)アピールできる機会なので。(ベネズエラ戦は)アジアカップに向けての試合だと思いますし、そういう位置づけかな、と思います」
とはいえ、選手間の競争はあるものの、まだアジアカップを強く意識するような雰囲気はチーム内にないと話す。
「もっと(アジアカップ)直前になったら変わってくると思いますけど、いままだそれよりも、個々のアピールしたい思いが強いと思う。そういうところは前回の試合とかと一緒かなと思います」
ではチーム内の成長という点についてはどうか。森保ジャパンに最初から名を連ね、初戦、そしてウルグアイ戦とゴールマウスを任されている守護神が考える変化とは?
「より、攻撃のコンビネーションは増えてきていると思いますし、精度も上がってきていると思います。そういうところでは、攻撃に関しては期待を持てると思います。あとはもう後ろの、失点を抑えるというところ。毎試合毎試合、課題は出ているので、そこは一つひとつ修正していければ、面白いサッカーができるんじゃないかなと思います」
手ごたえは感じている。森保監督からは最後尾で攻撃の一歩目のとしての役割も期待されているところだが、その点についてもスムーズに消化できているのか。
「もともと自分が思っているものと(監督の考えは)近くて、もちろん一発でゴールに直結できるようなシーンがあればそうすべきやし、無理やりつなぐというのではなくて、まず前を見てチャンスがあれば、ということだと思っています。それがなかったときに、後ろからしっかりビルドアップということを、キーパーとしてノーリスクでやっていかなあかんと思う。そこが求められているところだと思うので。そこは自信もありますし、自分も求めているところなので、どんどん積極的にチャレンジしていきたいなと思います」
これまでの対戦相手と違い、アジアカップ本番では、相手が引いてくるケースも考えられる。森保監督も口にしている『対アジア』という戦いでのGKの役割とは?
「(そういう戦いでは)相手が引いてくるイメージが強いので、なかなかキーパーとして、前からくる相手に外すというようなことは少ないと思います。ただ、カウンター1発でいかれるというシーンがたぶん増えてくると思うので、そういうところでしっかりとシュートストップで結果を残していかなあかんと思います。
攻撃に関して、今はそういう引かれた相手にも、どんどん仕掛けていけるメンツもいますし、そういう練習もしています。その点では、相手に引かれても、楽しみだなと思います」
日本はこれまで、アジアの舞台において、たびたび攻めあぐねて苦しい戦いを強いられてきた。しかし、現在のチームはそれも織り込み済みで、準備をしているという。「楽しみ」という言葉は、東口の偽らざる本音だろう。
GK像の確立者、川口の引退
アジアカップと言えば、2004年に中国で開催された大会で優勝の立役者となった川口能活が、先ごろ、今季限りでの引退を発表した。代表で数々の実績を積み上げ、日本のGK像を確立した先輩の引退について、率直に聞いた。どんな印象を抱いているのか、どんなプレーが記憶に残っているか。
「あの身長で、俊敏に、華麗にシュートストップをされていたので、それを代表舞台で、世界を相手にできていたというのが、とても印象にありますね。あとはホンマ、神懸かっているPK戦とか。アジアカップのPK戦は、頭に焼き付いています」
そのアジアカップの準々決勝、120分の激闘の末、PK戦にもつれ込んだヨルダン戦での川口のプレーは日本のサッカー史に刻まれている。
中村俊輔、三都主アレサンドロのキックがピッチの芝に足を取られたこともあって大きく外れ、逆に相手に2本を決められて0-2。主将の宮本恒靖がエンドの変更を主審に求めて、実際に変更されるという前代未聞の決断が下されたあと、川口がビッグプレーを連発した。
福西崇史が決めるも相手にも決められて1-3。日本の劣勢は変わらない。そこからだった。中田浩二が4本目を決め、相手が決められた終わりというところで、川口は相手のコースを読み、ストップし、その場を支配した。そして最終的に4-3で勝利を手にする。このPK戦をモノにできなければ、日本のアジアカップ連覇はなかった。
そんな偉大な足跡を残した先輩GKに、東口は尊敬の念を抱いている。会見で印象に残った記者に問われると、こう答えている。
「『またキーパーやりたい』と仰っていたのが、すごい印象的で。自分も引退するときに、そう言えるような終わり方というか、充実感というか、そういうところまで行けたらいいなと思います」
川口がその名を刻んだアジアカップでゴールマウスを守るために、アピールを続けている東口。あの日の川口のように勝利を手繰り寄せる存在になるべく、日々研鑽を積む。
取材◎佐藤 景 写真◎Getty Images