前回王者ドイツは初戦でメキシコに苦杯。鮮やかなカウンターで前半に先制されると、後半の猛攻も実らず完封負けを喫した
文◎国吉好弘 写真◎Getty Images
敗退の危機に陥ったアルゼンチン
グループステージの第2戦を終えて、日本がH組の首位に立っているのは喜ばしいことだが、この組の本命だったコロンビアにしてみれば、思わぬ苦しいスタートとなった。H組に限った話ではなく、今大会は優勝経験のある強豪国が、序盤から軒並み苦戦を強いられている。
F組では前回優勝のドイツが初戦でメキシコに敗れ、第2戦もスウェーデンに勝ちはしたものの、後半アディショナルタイムの逆転劇で望みをつなぐ辛勝だった。前回準優勝のアルゼンチンは、D組の初戦で初出場のアイスランドに粘られて1-1の引き分け、続くクロアチア戦では0-3の完敗。敗退の危機に陥りながら、第3戦でナイジェリアを何とか振り切ったものの、勝ち越し点は後半終了間際だった。
さらに優勝候補のブラジルが、E組の初戦でスイスと1-1で引き分け、続いてコスタリカにも後半アディショナルタイムの2得点で2-0と、大苦戦を強いられた。B組のスペインも、ポルトガルと打ち合いの末に3-3と引き分けた後、第2戦ではイランのゴールをなかなかこじ開けられず、後半に相手DFのクリアがFWジエゴ・コスタに当たってゴールに吸い込まれるという、幸運な決勝点で勝利。第3戦もモロッコと2-2の引き分けだった。C組のフランスは2連勝で決勝トーナメント進出を決めたものの、オーストラリアに2-1、ペルーに1-0と、ともに1点差の際どい勝負だった。
このように強豪国・優勝候補の苦戦が目立つのは、対戦国が徹底的に相手を分析し、対策を練ることで、力の差はあっても易々と勝ち切ることができなくなっていることを示している。
ドイツを下したメキシコは、試合後にオソリオ監督が「6カ月前からドイツ戦の準備をしていた」と語ったように、あらゆるプレーを分析した結果、これまで基本としてきた3バックから、4バックの4-2-3-1に布陣を変更。「カギだった」という両サイドを二段構えにして、ドイツの攻撃を制限するともに、そこからチャンスも作り出した。特に左サイドでは相手の右サイドバック、キミッヒの攻め上がりを警戒しながらも、あえて前に行かせ、そのスペースを最もスピードのあるロサーノが活用。その後ろからガジャルドが援護することで、2人のコンビで確実にドイツの守備に綻びを生んでいた。
いまや対戦相手のすべての試合を映像で確認でき、選手個々のクラブでのプレーも見ることができる時代だ。選手のポジション、動き、運動量など、ありとあらゆるデータが分析専門のスタッフ、あるいはそれを事業としている会社から提供される。それらを戦術に落とし込める指揮官がいれば、少なくとも相手のストロングポイントを消すことはできる。
強豪国は今後、その対策をさらに打ち破っていかなければならない時代になったということだろう。