浦和が6戦目にして、初勝利を挙げた。開始5分に武藤雄樹のパスで抜け出した興梠慎三が先制ゴールをマーク。後半は防戦一方になったが、守備陣が最後まで耐えて無失点に抑えた。4月2日に就任した大槻毅暫定監督はリーグ戦の初陣を飾った。仙台は好機を生かせず、初黒星を喫した。
■2018年4月7日 J1リーグ第6節
浦和 1-0 仙台
得点者:(浦)興梠慎三
(仙)なし
「苦しいときこそ逃げてはいけない」
大槻暫定監督のリーグ戦初陣。5戦未勝利と窮地に追い込まれたチームに、38歳の平川忠亮が落ち着きをもたらしていた。
今季、公式戦初出場。メンタル面での気負いもなければ、フィジカル面でのブランクもなかった。
「たまたま、こういうタイミングでの出場になったが、いつでも試合に出る準備はしていた」
3-4-1-2の右アウトサイドに入ると、指揮官から与えられた守備のタスクを確実にこなした。3バック脇のスペースを埋めつつ、相手のサイドアタッカーには冷静に対応。後半途中から仙台の中野嘉大に何度も1対1を仕掛けられたが、浦和の右サイドから決定的に崩されることはほとんどなかった。フル出場を果たし、埼玉スタジアムで勝利の笛を聞くと、少しほっとした表情を浮かべていた。
「まず1勝ということを考えていた。チームのためにすべてをささげてプレーしようと思った。結果がすべて」
苦しい状況でバトンを受けた大槻暫定監督への思いも見え隠れする。筑波大時代にも指導を受けており、多くのことを学んだという。当時は筑波大コーチと大学生の関係。06年から10年にもトップチームのコーチとしてともに戦っている。
「やるべきことを明確にしてくれる。はっきりものを言う人で、すごく分かりやすい」
浦和一筋17年目。数多の監督の下でプレーし、信頼されてきた男の言葉には説得力がある。
ただ、チームの状況は好転したわけではない。6節を終えて、いまだ勝ち点4。指揮官も「暫定」という立場。チームの方向性は、まだはっきりしない。それでも、浦和で幾度の苦難を乗り越えてきた男の腹は座っている。
「苦しいときこそ逃げてはいけない。こういうときだからこそ、必死にやらないと」
最後に頼りになるのは、浦和の男だ。
文◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE PHOTOS