■J1リーグ 開幕節
広島 1-0 札幌
得点者:(広)ティーラシン
    (札)なし

2度の大ケガから復活

明治安田生命J1リーグ第1節が2月24日に行なわれ、ホームで札幌と対戦した広島は1-0で勝利。J1残留争いを強いられた昨季からの立て直しに向けて、幸先良く勝ち点3を手にした。

試合後、サポーター席の前でハンドマイクを手にしたDF佐々木翔は、あまり多くを語らなかったが、理由があったのだという。「あそこで熱い話をしたり、自分の感情が高ぶるような話をすると、危ないので。それぐらい、難しい時期もありましたから。サポーターの皆さんには申し訳ないですけど、軽めにさせてもらいました。それが僕らしさでもあると思いますし」。いつものように努めて明るく話してはいたが、瞳は潤み、声も少し震えていた。涙を懸命にこらえているのは、近くにいればすぐに分かった。

多くの苦難を乗り越えた末の、2年ぶりの公式戦のピッチだった。

2016年3月、1stステージ第4節の大宮戦で右ヒザの前十字靭帯を断裂。前年のシーズン終盤に台頭してリーグ制覇に貢献し、開幕から先発に定着していた中での、全治8カ月の重傷だった。さらに2017年1月、完全復活間近と思われた時期に、同じ右ヒザの前十字靭帯を再断裂。再び全治8カ月となり、一からのリハビリを余儀なくされてしまう。

それでも復活を信じて歩みを進めた努力が実り、左サイドバックで先発して2年ぶりに公式戦のピッチへ。前半は効果的なオーバーラップを何度も繰り出し、左足のクロスでもチャンスを演出した。26分には左サイドからのセンタリングにヘッドで合わせ、惜しくもクロスバーに当たって決まらなかったものの、攻守に躍動感あふれるプレーを見せた。

後半は同じサイドから攻め込まれる場面が増えたが、懸命に踏ん張った。「チームとして耐える時間は、もちろんある。そこから自分たちの時間を増やすことが、これから大事になってくる」というチームの課題も認識したが、何とか逃げ切って1-0で勝ち、自身もフルタイム出場で勝利に貢献。「楽しかったです。この雰囲気の中でプレーできることは幸せですし、そこに戻ってくることができたのは良いこと」と久しぶりのプレーを振り返った。

「今日、試合に出なかった選手でも、良い選手はたくさんいるし、今季は連戦もあるので、誰が出るか分からない。選手一人ひとりが良い準備をすれば、良い結果がついてくると思う」と気持ちを引き締めたが、もちろんポジションを譲るつもりはない。「ケガをしてリハビリをするのは選手として当たり前で、ここに戻ってくるのが最低ライン。この後もピッチで結果を出していくのが大事」と、早くも次の戦いを見据えていた。


文◎石倉利英 写真◎J.LEAGUE PHOTOS


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