発売中のサッカーマガジン9月号では、リーグ中断前、好調さが際立っていた川崎フロンターレの阿部浩之を直撃した。
すんなりいけましたね
今シーズンの新加入選手にして、すでにチームに欠くことのできない存在と言える。リーグ戦16試合で8得点。10節以降はアシストも増え、目に見える形で結果を残しているアタッカーだ。何より注目したいのは、攻守両面でチームを機能させる質の高いプレーである。
なぜ、特殊(すなわち馴染むまで時間がかかる)と言われるフロンターレのサッカーに、これほど早くフィットできたのか。そして、本人は現状をどのように分析しているのか。
ACLを特集した号で実施したインタビューだが、アジア制覇に向けた思いとともに、阿部に聞きたかったのが、この点だった。
「自分で順応性があるとは思わないですけれど、ないってわけでもないというか」
「(フロンターレとほかのクラブとの)違いはパスの考え方の部分ですかね。体か慣れるまでは少し時間がかかりましたし。それでも言っている意味は、はじめから理解できました」
「体が慣れてきて、ある程度(僕が)味方の特長を分かって、僕の特長を周りに分かってもらえたから、すんなりいけましたね」
そのプレー同様に、取材中にその話が〝ノッキングする"ことはなかった。どんな質問にも、よどみなく答えていく。
試合に勝っても負けても、常にメディアに対して自分の考えを口にする理由をたずねると、「プロだから自分の考えをしっかり伝えなければいけない」と自覚するからだと阿部は話した。もともとは「人見知り」でどちらかといえば「話すのは得意じゃかった」らしいが、現在の姿からはとても想像できない。そんな印象をぶつけると、「だとすると、人見知りは治っているんですかね」と本人は笑った。
まさしく、プロフェッショナル。その考えに貫かれた言葉は、どれも印象的だった。ここでもう少し紹介してみたい。
「自分は能力的に、体もスピードも技術も、そんなに高い選手じゃないと思っているので、考えないとこの世界では生き残っていけない」
「前(のポジション)で使ってもらえているんで、毎試合ゴールシーンに絡んでナンボですから」
「1トップに入ったときは全然、満足できていない」
「内容が悪くても勝ち点を取ったり、しぶとく勝ちきることが(チームには)必要なんやと思う」
ここに並んだ言葉からも、阿部のプロとしてに覚悟と姿勢が感じられるのではないだろうか。ほかの選手にない彼の魅力を挙げるとすれば、『圧倒的に前向きな姿勢』と『どこまでも柔軟な思考』になるだろうか。それが今、フロンターレにポジティブな影響を与えているように思う。
本来設定されていた取材時間を大きく超えて収録した阿部の話は現在発売中の9月号に『ロングインタビュー』として掲載している。ACLへの決意もその記事の中で、たっぷりと。ぜひ、お読みいただきたい。
(取材◎佐藤 景/写真◎福地和男)