2020年東京オリンピックの出場が期待されるスターを紹介するこのコーナー。第1回はU-20ワールドカップでMVPを受賞したイングランド人FWをピックアップする。
母国の万能ストライカー
イングランド人のドミニク・ソランケを知っているだろうか。
ディエゴ・マラドーナ、リオネル・メッシ、セルヒオ・アグエロ(以上アルゼンチン)、ポール・ポグバ(フランス)……そんな世界の名だたるプレーヤーたちと同じく、2017年のU-20ワールドカップ(旧ワールドユース)でMVPを受賞。歴史にその名を刻んだストライカーだ。
イングランド南部のレディングで生まれたソランケは、チェルシーのアカデミー育ちだ。イングランドの各世代別代表にも選出され、17歳まではエリート街道を歩んできた。2014-15シーズンにはUEFAチャンピオンズリーグでデビューも果たし、クラブも次代を担う選手として期待していた。
しかし、オランダのフィテッセへのレンタル移籍を経て、2016-17シーズンにロンドンへ戻ってくると、待っていたのは厳しいレギュラー争いだった。結局、ジエゴ・コスタ(スペイン)とミシー・バチュアイ(ベルギー)の牙城を崩せず、出場数はゼロに終わった。
そして、シーズン後の5月に開幕したU-20ワールドカップ韓国大会。マーカス・ラッシュフォード(イングランド/マンチェスター・U所属)やキリアン・ムバッペ(フランス/モナコ所属)ら、すでにA代表で活躍する同世代の選手が参加を見送った中で、世界的にはまだ無名に近いソランケのプレーは際立った。
後方からの縦パスを引き出すポジショニングが的確で、ボールを受けると長い手足を巧みに使ってポストプレーをこなし、隙あらば強烈なシュートを放つ。前線からの守備も怠らない。サッカーの母国の10番を背負うにふさわしい、万能ストライカーぶりを見せた。
エースは開幕戦となったアルゼンチン戦(○3-0・1ゴール)に始まり、準々決勝のメキシコ戦(○1-0・1ゴール)、準決勝のイタリア戦(○3-1・2ゴール)で、計4ゴールを決めた。ここぞの場面でゴールを決める勝負強さを示した。優勝の立役者であるソランケのMVP受賞は当然だった。
世界的スターへ続く階段を一段のぼったソランケは、大会期間中に、ある決断を下していた。慣れ親しんだブルーのユニフォームを脱ぐということを――。
トップチームでの出番に恵まれなかったチェルシーを退団し、心機一転、リバプールへの移籍を決めたのだ。
来たる2017-18シーズン、ソランケはマージーサイドへと活躍の場を移す。ドルトムント時代に香川真司を育てたことでも知られるドイツ人の名将ユルゲン・クロップのもとで、どのような進化を遂げるのか。
3年後には、東京オリンピックが待っている。前回のリオデジャネイロ・オリンピックの際は実現しなかったが、もし2012年のロンドン・オリンピックに出場したイギリス代表が再結成されれば、ソランケはユニオンジャックを胸に付けてプレーすることになるだろう。
Profile◎Dominic Solanke/1997年9月14日生まれ、リバプール(イングランド)所属。ナイジェリアにルーツを持つイングランド人。チェルシーのアカデミーで育ち、世代別代表でも活躍。2017年のU-20ワールドカップ韓国大会で、大会MVPにあたるゴールデンボールを受賞した。185cm、75kg