上写真=左から中国のチェン・ヤオドン監督、UAEのブロリ監督、韓国の黄善洪、日本の大岩剛監督(写真◎川端暁彦)
韓国の黄善洪監督が「死の組」と形容したグループ
パリ五輪男子サッカーのアジア最終予選を兼ねるAFC U23アジアカップが15日からカタールの首都ドーハを舞台に開幕した。
日本が属するグループBの初戦は16日。日本はまず、22時(日本時間)から中国と対戦し、以降は中2日でUAE、韓国のU-23代表と連戦をこなすこととなる。
韓国を率いる黄善洪監督が「死の組だ」と率直に形容したように、タフな戦いの連続になることは各国の監督が覚悟する通りだろう。
15日、前日の公式記者会見に臨んだ大岩剛監督は緊張感を漂わせる面持ちで、まずはこう語った。
「非常に良い準備ができています。しっかりこの大会を勝ち抜くための準備をし、明日からのグループステージをまずは勝ち抜いていきたいと思います」
たった3試合しかないグループステージ、しかも「死の組」となれば、精神的な意味でも初戦の占めるウエイトは大きい。チームはまずこの初戦へ集中して準備を進めてきた。
11日にはU-23イラク代表との練習試合も実施。環境への馴化も含めて徐々に準備を進めてきた。直近のJリーグで負傷した選手たちの状態も上向き。DF半田陸(ガンバ大阪)のみが依然として別メニュー調整を続けているが、大岩監督は「100(%)には来ていないが、グループステージの内には戻ってこられる」という見通しを語っている。
キャプテンは藤田譲瑠チマに決定
毎回、大会に臨むにあたって指名しているキャプテンには、ここまで同様の役割をこなしてきたMF藤田譲瑠チマが選出された。
「みんなの前で『キャプテンだ』と伝えられましたが、自分がやるべきことは変わらない。初戦から勝つためにやるだけ」(藤田)
初戦に向けて読めないのは天候の要素。日中38℃を記録した日もあったものの、思った以上に涼しい気候の日が続いており、中国戦当日もまさかの雨予報。試合前日も、お天気雨が降るなど、砂漠気候の国で思わぬ「水浴び」となった。
この点について藤田は「土砂降りにならなければ別に影響はない」と言い、大岩監督も「しっかりと色んな準備はしておきたい」としつつ、多少の雨ならば日本が多用するグラウンダーのパスが芝の上を走りやすくなることも期待できるだけに、ネガティブに捉える様子はなかった。
どちらにしても、「準備してきたもの、積み重ねてきたものを出すだけ」という大岩監督のスタンスに揺らぎはない。中国戦に向けての準備については一番に「メンタル」を挙げつつ、「準備してきた個人戦術・チーム戦術のすべてを発揮して第1戦へ向かっていく」とした。
パリ五輪への切符を懸けての最終決戦。キャプテン、副キャプテンを指名するに際して、大岩監督は選手たちに「全員で良いモノを作っていこう」と呼び掛けたと言う。
ベストメンバーが揃わなかったといったネガティブな要素がどうしても強調されがちだったが、これまでも同様の状況はしばしばあった。チーム結成から「集まった23人が自分にとってのベストになる」という指揮官の姿勢は一貫している。
大会を戦いながら集団としての一体感を獲得し、個々に自信を付ける選手も出てきて、より良いチームに仕上がっていけるか。そんなチームとしての「成長力」が8大会連続の五輪切符を左右するような気がしている。
取材・文◎川端暁彦