上写真=Uー23ウクライナ代表に2−0で勝利したUー23日本代表。来月の最終予選へ弾みをつけた(写真◎湯浅芳昭)
バランスを保った藤田の存在感
日本は今回の2試合で、スターティングメンバーを入れ替えて臨んだ(山田楓喜のみ両試合に先発)。相手のタイプが全く異なるため、結果と内容が異なるのは当然ともいえるが、マリ戦では目指してきたプレーができず、一方のウクライナ戦では狙いのプレーができていた。
簡潔に言うなら、マリはプレーの強度が高く、よりフィジカルで強かったため球際で後手に回り、思うようなプレーができなかった。ウクライナはよりボールをつなぐ意識が強かったため、日本は相手陣内でボールを奪って主導権を握ることができた。パワフルな相手に押し込まれると苦戦し、ボールを動かし合う戦いなら優位に立てるというのはA代表にも共通する点かもしれない。そんな2試合で印象深かったのが中盤の構成だ。
マリ戦では、中盤の中央は川崎颯太をアンカーに山本理仁と植中朝日で組んだが、山本と植中のプレーの性質上、山本が引いて植中が前に出る時間帯も多く、位置関係が悪かった。パスコースが限定されて相手のプレスに苦しみ、同点ゴールもそんな状況から奪われた。ウクライナ戦ではアンカーに藤田譲瑠チマ、インサイドハーフを松木玖生、荒木遼太郎がプレーした。
これまでなら藤田と松木をボランチにして荒木がトップ下を務めるというのが、それぞれのプレースタイルを考え合わせても妥当に思えたが、この日はあえて4-3-3での構成を試したことが奏功した。
松木の守備の強度は言うまでもないが、鹿島からFC東京に期限付き移籍した荒木も今季開幕からの好調をピッチで表現。「守備の意識が高くなった」ことをその要因に挙げていたが、プレスの強度を高めており、試合後にウクライナのルスラン・ロタン監督に「中盤でボールを失うことが多かった」と嘆かせた効果的な守備の実践に貢献していた。
また開始5分に藤田のボール奪取から出たパスを受けた荒木が巧みなターンからファーストシュートを放ち、得点にはならなかったものの、その後も数度の決定機を迎えるなど、随所で持ち味を発揮した。
見逃せないのは、そのファーストシュートを導いた藤田の存在だ。荒木と松木の背後で絶妙なポジショニングを見せ、3人の位置関係を考えつつ、攻守のバランスを取っていた藤田はワンタッチ、ツータッチで小気味よくボールをさばいて攻撃のリズムを生んでいた。
後半途中には荒木に代わって田中聡が登場。その特徴を考えれば、守備の強度を上げて1-0のリードを守り切る策にも見えたが、追加点となる鋭いシュートを決め、攻撃面でも印象深いプレーを披露した。藤田、松木、田中の3人でも良いバランスを保ってプレーの質を維持していた。この日の中盤が示した構成力やバランスはアジアカップを控えるチームにとってポジティブな要素といえるだろう。攻撃に変化をつけたければ荒木、より守備に重点を置くなら田中を起用する手もある。
センターバックが定まらないディフェンスラインや、鈴木唯人(ブレンビー)、三戸瞬介、斎藤光毅(ともにスパルタ・ロッテルダム)、小田裕太郎(ハーツ)ら個の力に長ける海外組のアタッカーを招集できるか不透明な攻撃陣に比べて、チームの基盤となる中盤が充実している点は心強い。ウクライナ戦のように中盤を制してパリへの切符をつかみ取ってもらいたい。
文◎国吉好弘