U-24日本代表はU-24メキシコ代表との3位決定戦に敗れ、東京五輪を4位で終えた。長年、この世代の選手たちを現場で取材してきた川端暁彦氏によるコラム『五輪のツボ』。最終回は、今回の戦いから見えてきた「差」と進むべき「道」について綴る。

上写真=3位決定戦に敗れ、涙を流す久保建英に声をかける反町技術委員長(写真◎JMPA渡部薫)

文◎川端暁彦

足場から変えていく必要性

 東京五輪男子サッカー決勝の行なわれる横浜国際総合競技場にて、小机駅前のローソンで買ってきた素麺をすすりつつ、この原稿と向き合っている。

 ここまで勝ち残ったのはスペインとブラジル。欧州と南米を代表するサッカー大国である。伝統的に現行方式の五輪に対して熱意を持って取り組んできた国でもあり、大会前から共に優勝候補の1、2位に推されていたチームである。この決勝は、順当な結果と言えるだろう。

 3位に入って銅メダルを獲得したメキシコも、五輪を重要な大会と位置付けて、強化の場として利用してきた国だ。2012年のロンドン大会では金メダルも獲得。今大会もベテランGKオチョアをキャプテンに迎える重厚な陣容を組んでタイトルを狙ってきた。大会前からメダル候補と評されていたとおりの地力があり、準決勝で惜しくもブラジルにPK負けしたとはいえ、その銅メダルは順当な結果と言えそうだ。

 ひるがえって、日本はどうだろう。先入観も贔屓目も抜きにして、単なる外国人記者になった気分で評するなら、ベスト4は十分よくやった国という評価になりそうな気はしている。開催国というアドバンテージはあったものの、観衆の不在によってその効果も半減し、戦力的にはブラジルやスペインに見劣りするのは否めない。メキシコ、コートジボワールと同程度、あるいはそのすぐ下くらいの評価になるだろうか。グループAを抜けたチームが当たるグループBのチームが戦力的に少し落ちる印象は否めなかっただけに、ベスト4は順当な結果と評価する感じだろうか。

 そしてもしその先に達するなら番狂わせ、と……。

 日本の結果は4位。戦力相応と言ってしまうと身も蓋もないが、まずその現実は受け入れた上で考え始めたい。メキシコを「勝てた相手」と評したMF久保建英の言葉が別に間違っているとは思わない。極端に言えば、53年前のメキシコ五輪がそうだったと聞くように、最初から3位決定戦に回ることを見据えて準決勝を戦ってしまえば、銅メダル獲得の確率はグッと上がったことだろう。

 スペイン戦にしても勝機がなかったとは思わないのだが、MF田中碧が「たとえこの大会で世界一になったとしても、彼らとの間に差があったことは変わらない」と強調したとおり、幸運が味方するか、采配が当たるかして勝ちを拾えたとしても、「差」から目をそらすべきではない。

 五輪のベスト4でも満足できない、戦力的にはむしろ相応の結果かなと思えること自体が日本サッカーの進歩を示しているとは言える。

 反町康治技術委員長は「メキシコと1勝1敗だという形になりましたけれども、FIFAのランクで10以上離れているところまで手が届いているということをどう考えるか。もう1回しっかりと考えていかなければいけない」としたが、同時にスペイン戦については「みなさんもどちらかというと好意的に書いていただいている記事が多かったんですけれども」とした上で、こうも語る。

「スペイン戦は近づいてはいるものの、まだまだ足りない部分がたくさんあるなと個人的には思った。その差を縮めるために、急加速でいろいろやっていかなきゃいけないことというのがあるんじゃないかと思っています」

 反町技術委員長は代表チームの強化策はもちろん、指導者養成の改革など日本サッカーの足場から変えていく必要性をあらためて痛感した様子。代表チームの力は、監督・選手・スタッフすべてひっくるめ、その国の力を反映したものだ。

「4位相応」のチームに仕上がったことを過剰に悲観する必要はないが、五輪が決して世界最高峰の大会でないことと合わせて考えれば、未来を楽観することもできない。進取の精神を忘れず、「よりサッカーが強い国になるために」進んでいく必要がある。

著者プロフィール◎かわばた・あきひこ/2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画、のちに編集長を務めた。2013年8月をもって野に下る。著書『2050年W杯優勝プラン』(ソルメディア)ほか


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