上写真=オンラインで取材に応じる瀬古歩夢(写真◎スクリーンショット)
A代表のCBのプレーを盗めるチャンス
日焼けした顔のせいだろうか。ACLで決勝トーナメント進出を決めて帰国した自信だろうか。オンライン取材で画面に映し出された瀬古の表情が、これまで以上にたくましく見えた。
「(ACLは)きつい中やってきたので、コンディション的には自分自身良いと思っているし、五輪予選も中2日で進むので非常にコンディションは良いかなと思う」
最終選考の場となったU-24日本代表の6月シリーズは当初、選外だった。しかし活動中にケガ人が出て追加招集された。「しっかりやったらなあかんな」の言葉通り、最終選考の場となったジャマイカ戦(6月12日)の後半から出場し、アピールに努めた。相手のレベルの問題もあり、印象的なプレーは多くはなかったが、五輪本大会のバックアップメンバーに選ばれることになった。
ギリギリでチャンスをつかみ取った形だが、バックアップメンバーは登録18人に不測の事態が起きたときに初めて登録され、試合の出場が可能になる立場。何もなければ、出場機会は得られない。ところが、メンバー発表後に今度は大会の運用が変更される。18人+バックアップメンバー4人の22人の中から試合のたびに18人を登録し、戦うことになったのだ。つまり、瀬古の出場可能性が高まった。「持っている男だなと正直思っています」。本人がそう感じるのも無理はないくらい、「持っている」。
バックアップメンバーになったときには「正直、悔しいという言葉しかなかった」というが、チームに「帯同して、いまA代表のCBである2人(吉田麻也、冨安健洋)のプレーを盗めるチャンス」ととらえ、自分の成長につなげる機会にしたいとポジティブに考えていた。だが、試合出場の可能性が広がり、「モチベーションは上がったし、なおかつ試合に出るために練習からアピールしないといけないと思った」と話す。
「もう一度、世界と真剣勝負できる場に選ばれたことを非常に光栄に思っています」
この1カ月余りの間の紆余曲折が、瀬古をよりタフにしたのではないだろうか。吉田と冨安の壁は高い。ただ、瀬古はしぶとく、力強く、道を切りひらいてきた。
「いつ何が起こるか分からないし、試合に出場できることがあれば100パーセントの準備をしていきたいと思っています」
瀬古は、五輪の舞台に上がる準備を整えている。