上写真=谷晃生の魅力は常に全力であること。大迫敬介、鈴木彩艶とともにゴールを守る(写真◎山口高明)
「お互いがお互いをリスペクト」
その平常心が、日本を救うときが来るかもしれない。
「いよいよ本大会に向けてのキャンプが始まった気持ちはありますけど、これまでとそんなに大きな変化はないですね」
谷晃生は動じない。それは、ゴールマウスを守る立場の選手に最も大切なものかもしれない。どんな状況になっても平常心。東京オリンピックまでまだ少し時間があるとはいえ、GKがいつもと変わらない姿勢でいることはチームの安定感につながる。
「そこまで大きな違いはないですけど、大会を通してチームとしても個人としても成長しながら戦っていかないといけない。そうすることで金メダルに近づけます。一つひとつのプレー、練習に対して緊張感もありつつ、いい雰囲気で練習できているのかなと思います」
GKは繊細なポジションで、失点に直結する。できる限りの準備を心がけるが、その点で的確なアドバイスをくれるのが、川口能活コーチだ。ご存じのようにかつての名GKで、オリンピックで言えば、1996年アトランタ大会でブラジルを1-0で下す「マイアミの奇跡」に導いた。その細やかな指導に影響を受けている。
「細部までこだわることが必要だと感じています。そこをどこまで突き詰められるか。練習でやれないと試合でできないですから。キャッチするのか、弾くのか、弾くならどこに弾くか、ポジショニングもそう。練習の中で落とし込みながら、試合を意識しながらいまはやれているのかなと思います」
そのために必要なこととして、「コミュニケーション」という単語を何度も口にした。
「チームとしての守備というところでディフェンスラインとコミュニケーションをとりながら、自分はこういうプレーをするというのを6月(の代表活動の期間)にすべてを出せたわけではないので、試合の状況の中でコミュニケーションをとってやっていくことが必要だと思います」
「(6月に)すべてでうまくいったわけではないというのは、守備機会も少なかったと思いますし、試合になれば違ったシチュエーションも出てくるので、いろいろ変わる中でコミュニケーションをとっていかないといけないと思います」
「(無観客になれば)そういう状況をポジティブにとらえるしかないと思います。声が通ったり、味方とのコミュニケーションが取りやすくなったり、そこはポジティブな部分かなと思います」
「日頃ともに練習していないのでコミュニケーションは絶対に合わせていかないといけない。短い時間の中でいかに突き詰められるかを意識してやっています」
期間が短いからこそ、そしてコロナ禍での制限された活動だからこそ、濃度の高いコミュニケーションを強く意識している。
「これから続くサッカーキャリアの中で、非常に大きな価値のある大会になると思います。本当にこれから先のサッカーキャリアが変わるといっても過言ではない大会になると思います」
東京オリンピックをそう位置づけるからこそ、「お互いがお互いをリスペクトしている」という大迫敬介、鈴木彩艶との「GKチーム」で共闘していくつもりだ。