上写真=相馬勇紀は開催地決定から8年、東京五輪出場を一つの目標にしてきた(写真◎Getty Images)
かつては遠い存在も「絶対に選ばれる」と過ごしてきた
「本当にうれしいですし、日本代表としてオリンピックを戦うことに幸せな気持ちを感じています」
この夏、日の丸を背負って世界を戦う権利を得た相馬は、素直な思いを口にした。五輪の舞台に上がれる選手は基本的には登録メンバーの18人。オーバーエイジの3人を除けば15人という狭き門を、相馬は潜り抜けたことになる。
「今朝と昨日と、代表発表の夢を見ました。自分でも意識しているのかなと思っていたんです。だからメンバーに入ったときはすごくうれしいかった。2013年に東京オリンピックが決まってから、僕にとってはずっと目指してきた場所でした。決定当時、高校生だった自分は代表に1回も選ばれることがなく、遠い存在だったんですけど、絶対に最後のメンバー発表で選ばれるんだって気持ちをもって、この8年間を過ごしてきました。ですからその思いが実ったというか。これまで高校や大学、プロになってからも素晴らしいスタッフに出会い、友だちや仲間、家族に支えられて過ごすことができました。自分を育ててくれた皆さんに感謝したいと思います」
その言葉に、相馬の思いが詰まっていた。
もちろん、五輪メンバーに選ばれることは通過点でしかない。本当の勝負がここからであることは相馬も承知している。重要なのは、本大会で何を見せるか。
「今は少し気持ちも切り替わって、選ばれたということは、次は金メダルを取るというところにスイッチを切り替えるというか。そこを目指してやっていきたい」
メダル獲得のために、いま持っているすべてを注ぐ覚悟だ。メンバー入りを受けて実施されたオンライン会見は、ジョホール・ダルル・タクジム(JDT)とのACL初戦の試合前に、滞在先のタイから参加した。その数時間後、相馬は先発でピッチに立ち、切れ味鋭いドリブルでボールを運び、難しい国際大会の初戦勝利に貢献している。自身の持ち味については、会見の中でこう語っていた。
「(自分と)あまり似ている選手はいないとも思っていて、強みとしては爆発的なところ。相手と入れ替われるのが強みだと思っています。それと縦に運べるところも他の選手と違う部分。そういう個の力を使っていきたいと思っています」
4-2-3-1の左右のMFと3-4-2-1ではウイングバックとしてもプレーできる万能性も持つ。名古屋で磨いた守備力も、他のサイドプレーヤーとは違う相馬の武器だろう。
「舞台が大きければ大きいほどワクワクするタイプ。最高のモチベーションがあります」
ACLで結果を出し、東京五輪へ。開催地決定の瞬間からため込んできた思いとキャリアの中で磨いてきた力を、相馬はこの夏ピッチで、爆発させるーー。