上写真=2点のビハインドを背負う中、チームを勇気づける1点を記録した南野拓実(写真◎Getty Images)
■2025年10月14日 国際親善試合(観衆44,920人/@東京スタ)
日本 3−2 ブラジル
得点:(日)南野拓実、中村敬斗、上田綺世
(ブ)パウロ・エンリケ、ガブリエル・マルティネッリ

W杯最多勝利の王国ブラジルに撃ち勝つ!
日本はパラグアイ戦から先発を4人入れ替え、現状のベストと思われるメンバーでブラジル戦に臨んだ。前日会見で森保一監督は「闇雲に」前からボールを奪いにいかず、「賢く戦う」と話していたが、その言葉通り、5−4−1のブロックをミドルゾーンに組み上げ、ブラジルにスペースを与えない。
簡単に食いつかず、タイミングをしっかりはかって攻撃の芽を摘んでいく。そして攻めに転じると、じりじりとブラジルゴールに迫っていった。左は中村のドリブルと鈴木淳の攻め上がり、右はシャドーの久保とウイングバック・堂安のコンビネーションで攻略を狙った。
22分には右サイドから堂安がボックスに進入してクロスを供給。ニアで南野が受けて素早くパスを送ると、ファーサイドに上田が飛び込んだが、わずかにタイミングが合わず。惜しい場面だったが、20分過ぎから日本が攻撃の形を作り始めた。
しかし、ブラジルはブラジルだった。26分、それまでの流れとは無関係に、何もないところからゴールへのルートを切り開いてみせる。右サイドバックのパウロ・エンリケの縦パスをルーカス・パケタが落とし、ブルーノ・ギマランエスがボックス内へスルーパスを通す。そこに走りこんだのがパウロ・エンリケ。お手本のようなパス&ゴーと3人目の動きはブラジルの選手に刷り込まれているDNAのようなもの。歴史上最強と言われる70年のワールドカップを制したチームがゴールを量産した形だ。
さらにブラジルがブロック崩しの方法を示したのは32分のことだった。ヴィニシウス・ジュニオールのパスを受けたパケタが鎌田との競り合いを制して最終ラインの裏に浮き球を供給。反応していたガブリエル・マルティネッリが左足ボレーでネットを揺らした。下がだめなら上から攻めればいいとばかりに、空中を使ってブロックを無効化し、追加点を挙げたわけだ。
ブラジルに2点をリードされた日本は後半開始から重心を上げた。高い位置からボールを奪いにいくと、52分に相手のミスを誘う。ファブリシオ・ブルーノに対して上田がプレッシャーをかけ、南野もパスコースを遮断。ボール奪取に成功し、南野がそのままネットを揺らして1点を返した。
1点を失ったブラジル守備陣は途端に安定感を失う。その機を逃さず、日本が厚みのある攻撃を展開した。久保に代わってピッチに入った伊東が堂安の浮き球パスで抜け出し、右サイド深い位置からクロスを供給。ファーサイドに詰めていた中村がボレーでボールをネットに突き刺した。
ついに2−2に追い付き、完全に日本ペースとなった。70分に伊東の右クロスからヘッドで狙った上田のシュートはクロスバーに嫌われたが、直後の左CKからだった(71分)。伊東が蹴ったボールに飛び込んだのはまたも上田。ドンピシャで頭を合わせて、3−2と勝ち越すゴールをねじ込んだ。
逆転に成功した日本は選手を交代させながら、高い集中力と強度を維持し、攻撃にギアを入れたブラジルに対抗していく。森保監督がチームに求め続けてきた粘り強く、一体感をもった守りでブラジルの猛攻をしのいでいった。
試合はそのまま、3−2で決着。過去13戦して2分け11敗と未勝利だった相手、ブラジル代表から歴史的な勝利をあげた。
取材◎佐藤景
