サッカー日本代表は7日、オーストラリアから帰国し、10日のインドネシア戦に向けて大阪府内で練習を行った。オーストラリア戦(✕0−1)で右シャドーとして先発した鈴木唯人が取材に応じ、プレー内容を振り返るとともに、自身の考えを語った。

上写真=インドネシア戦に向けて大阪府内でトレーニングを行った鈴木唯人(写真◎サッカーマガジン)

言われていることをやるだけでは何も生まれない

 前節のオーストラリア戦。5バックを形成し、MF4人を加えた9人で中を締める相手を、日本は攻めあぐねた。ボールを握っても、なかなか良い形に持ち込めない状態が続いた。

 ハーフタイム、鈴木唯人に指示が出る。左サイドでシャドーの位置から後ろへ下がってビルドアップに加わっている鎌田大地と同じように、右でもビルドアップに参加してはどうか、という指示である。相手の陣形を広げて、縦パスを打ち込み、より深い位置へとボールを運ぶためだ。

 だが、鈴木唯は自分の感覚を優先した。試合後には、こう言っていた。

「3センター(バック)とウイングバックの間に落ちて(=下がって)外側でボールを引き出せと言われましたけど、そういうのは左サイドで出来ていたので、自分は中に入って、そのまま逆サイドで数的優位をつくる方がいいかなと思って。変に右側で落ちすぎたら、左でつくっているときに中が1枚だけ、FWの大橋選手選手だけになって結局、攻撃が単調になるというか。なのでもうちょっと向こう(=左)にいって、面白い形をつくりたいなと。向こうに行ったときにたまに、それこそ(シュートシーンは、逆側にいて数的優位ができていたので。ああいうシーンをもうちょっと作れたら良かったと思いますけど」

 名波浩コーチからの指示を理解しつつも、自分のピッチ上の感覚に従ってプレーした。

 オーストラリアから帰国し、10日のインドネシア戦に向けて大阪で練習を行った鈴木唯に、再び前節のプレーについて質問が出た。

「単純にチームで求められている形というものだけでは崩しきれないというのもわかっていましたし、あれだけ引かれた相手に対して言われていることだけやっていても何も生まれないと思っていたので。選手の特徴もある程度分かった上で、例えば久保(建英)選手が左足で持った時には大体ここまでパス出てくるだろうなっていうのは自分の中では予想がついていた。後半は何回か中に入って縦をパス受けたりとかありましたけど、ああいうオフの動きを今シーズンずっと意識していたので、そういうところが(自分のシュートシーンには)出たのかなと思います」

 もちろん、鈴木唯はスタッフの考えを否定したわけではない。試合後、そして7日の練習の際にも名波浩コーチと意見をすり合わせたと明かしている。

「(すり合わせは)しました。(オーストラリア戦の)前半についても、中に入るのもいいけど、とりあえず外に引っ張って、平河選手をもうちょい高い位置に取らせていくのもいいぞと言われましたけど、自分はそこでは中に入って、向こうで鎌田選手がうまくゲームを作ることができていて、数的優位ができそうだったので、少し我慢して向こうサイドでやりたいっていうのは名波さんに伝えましたし。試合が終わってからと、(今日の)練習中も話したのは、そのバランスです。中に入りすぎてしまうと、やっぱりフォワードのコースを消してしまったりするので、そのタイミングと状況に合わせて動くことが大事になる。そこは試合を重ねていくにつれてうまくできるようになってくるのかなと」

 鈴木唯はまだ代表で2試合に出場しただけだが、積極的に意見交換してピッチ上でより良いプレーをしたいという強い思いがある。それは監督に対してもコーチングスタッフに対しても、そして選手に対しても、同じだ。

「このキャンプが始まってから、とりあえず(自分が)見えたら(パスを)出してくれとは言っています。もう強いボールでも何でもいいからとりあえず出してくれというのは腐るほどというか、口酸っぱいほど言い続けました。けど、やっぱり試合になるとどうしても、あれだけ引かれている相手に対してだと、みんなシンプルにシンプルに、簡単になってしまう。だから自分も受けた時にもう少し強引にでもいいから崩しにいくシーンが必要だったなと終わってから思いました。それが自分の特徴なので、今後もそういう風にトライしていきたい」

 プレッシャーのかかるエリアでボールを受けて「何かを起こす」のが自分の「ストロング」だと言い切る。「落ちて組み立てるのは正直言って誰でもできると思うので、そういったところで、今回はあまり落ちすぎずに、なるべくライン間で待って何か起こしたいと思った」。結局オーストラリア戦では、何かを起こしてネットを揺らすところまでは至らず、消化不良に終わった。それでも「トライ」し続けたいときっぱり言い切った。

 今回の活動には森保ジャパンでシャドーとしてプレーしてきた南野拓実や堂安律らが不在だ。鈴木唯は代表ではまだ2試合に出場しただけだが、結果を出すことが代表定着につながっていくと知っている。だからこそ自分が信じるところを臆せずはっきり口にした。

「自分は他の選手と違った特徴があると思っているので、そういうところを、インドネシア戦もそうですし、今後、代表活動していく中で『自分はこう』っていうプレーを見せていくしかないと思っています。あとはチームでのプレーが評価されて代表に選ばれていくのは間違いないので、新しいチーム(=フライブルク)に行きますけど、そこでしっかりと活躍した姿を見せれば、チャンスがより広がっていくのかなと思います」

 ただ言われたことをやるだけではなく、主張すべきはしっかり主張して初めて代表における未来が切り拓かれる。

 日本代表を突き上げていくのは、鈴木唯人のように揺るがない自分を持った選手なのかもしれない。

取材◎佐藤景


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