上写真=久保建英は自らがチームを牽引する強い意志をプレーに込めた(写真◎高野 徹)
■2025年3月25日 北中米W杯・アジア最終予選8節(観衆58,003人@埼玉ス)
日本 0-0 サウジアラビア
「より一層成長して、また6月に」
獅子奮迅、とか、鬼気迫る、というのはこのことだろう。ワールドカップへのリスタートとなるサウジアラビア戦で久保建英が見せたプレーには、世界一の目標を勝ち取るための明らかな迫力に満ちていた。
「しっかり気の緩みを見せずに勝ち点3を取りたかったですけど、前半はほとんどハーフコートゲームなのに、点が取れずに引き上げてしまって非常に残念です」
3月20日のバーレーン戦で北中米ワールドカップ出場を世界最速で決めた直後の重要なゲーム。そこから先発メンバーが6人変わり、久保は右のシャドーのままだったが、1トップは前田大然で、右のワイドには菅原由勢、3バックの右は高井幸大と、ボランチの遠藤航を除けば、近い場所でプレーするメンバーが3人、異なっていた。
それもあったからこそ、あらゆるエリアに顔を出した。何度もボールを触ってさばいたと思ったら、ときには逆サイドまでカバーしながら相手の攻撃を力強くブロックした。押し込みながらもなかなかフィニッシュに持ち込めないもどかしさを振り切るように、27分には自慢の左足で強烈なミドルシュートを見舞い、わずかに枠の上を通過したものの、停滞した空気を振り払った。
35分と36分には連続して、中央で受けて左の中村敬斗を使ってチャンスを生み出した。45分には右サイドから2人の間をテクニックを生かして抜け出し、ゴールに近づいた。ところが、どれだけ攻めてもゴールを割れない。62分には堂安律と交代して、背番号20の3月シリーズは終わった。
「1試合目に比べて修正して、圧力をかけて前半はほぼハーフコートゲームのような展開にできていたんですけど、決めきることをしないと足元をすくわれかねないので、しっかり決めきりたいなと」
まさに、それがすべてだろう。他にも多くの選手がゴールに迫り、チャンスは作ったもののゴールを割れない。どんなゲームにもはらんでいる、逆襲からの失点という危険性にさらされ続けた。
「僕個人が特に前半感じた課題としては、ポケットまではうまく取れてるけど、相手もそこは想定して2、3人入ってこられました。昔のサウジアビアと違って、僕らを研究してきて、僕らに対応するようにシステムまで変えてきている中で、前半、特に30分あたりからワンサイドゲームになったときに、もう少し選手たちで工夫がほしかったと個人的には思います。でも、最後のところまではいけていて、あとは決めきるのが強いチームだと思うので、そこは反省しかないですね」
アジアの雄であるはずの、あの勇猛なサウジアラビアが、日本を恐れて5バックにして、さらにその前に4人で壁を築き、ほとんど攻める意思すら見せないような戦いを挑んできた。敵将のエルベ・ルナール監督が「美しくはないが満足」と振り返って、勝ち点1を持ち帰るプランに成功したことを喜んだほどだ。
それに対する工夫をもっと、という思いばかりが久保には残った。
「ワールドカップ出場を決めた後の試合で、決して僕たちに気の緩みはなかったですけど、結果としては相手を押し込んだにも関わらず0-0で終わってしまったことは、僕らみんなで共有して反省もしつつ、各々自分自身のチームに帰ってより一層成長して、また6月に皆さんとお会いできるように頑張ります」
次なる戦いは6月、オーストラリアとのアウェーゲームとインドネシアとのホームゲーム。ワールドカップへの煮え切らないリスタートを、最終予選のラスト2試合でどこまで高めることができるか。バーレーン戦での1ゴール1アシストと、この日の堂々のプレーで日本代表のエース格であることを満天下に知らしめた男の本当の挑戦が始まる。