上写真=堂安律がよりゴールに貪欲になっている(写真◎サッカーマガジン)
「ヨーロッパでやっている感覚の方が近い」
「新しいフェーズに入ってくる」
日本代表のナンバー10を背負う堂安律は、最終予選を突破したいま、次のステージに歩を進めた実感をそう口にする。
「世界最速で決められたということは、どこの国よりも長くワールドカップへ向けた準備ができる。最終予選でアジアを戦い抜く戦い、勝ち切る戦い方と、ワールドカップの戦い方は少し変わる戦いになる。普段、僕らヨーロッパの選手がやっている感覚の方が近い。ちょっとそこに1回戻すというか、チームを擦り合わせる必要があると思います」
世界で勝つために、新たな剣と鎧を身につけ、磨き上げていくような感覚だろうか。その進化のためには1年3カ月という十分な時間がある。
「最終予選は緊張感があるから、あまりリスクを冒せなくてトライできなかったところは正直あった。少し思い切って…もちろん勝つこと、日本代表として戦う以上、勝つことを最優先に置きながらも、もう少しチャレンジ精神はいつもより深めてもいい」
先に失点することのデメリットは、最終予選では特に大きくなる。だが、その重しが外れたいま、まずは目の前のサウジアラビア戦でリスクを冒して狙うもの、つまりゴールに貪欲になっている。
「個人的にはゴールにもっと絡みたかった。チームとしてやらなくちゃいけない最大限の規律を守りながらも、攻撃で自分の良さをどうやってチームに浸透させていくか。最終予選の課題ではあったけど、最終予選で意見を言いすぎて変えてしまうのもチームの軸もすごい壊れますし、バランスを見ながらやっていた中で、多少、自分のわがままって言ったら言い方はあれですけど、エゴも多少は出せる風になるんじゃないかな」
いわば大人の賢い振る舞いでチームの中心であり続けたが、そこにいい意味での自由を表現する楽しみがある。
3-4-2-1システムを採用してきた最終予選では、堂安は右ウイングバックで起用されてきた。守勢に回ればしっかりと最終ラインに揃えたポジションを取るのだが、そのことでどうしても相手ゴールからは離れてしまう。そもそもが前線で暴れるのが魅力のアタッカーだから、悩みもあったと告白する。
「チームとしては多少僕が降り気味な、右肩下がりなところはやっぱりあった。チーム戦術も守りながら…最終予選での厳しさも分かっている中で、多少我慢をして日本のためにチームのためにやってきた。葛藤はありましたが、ワールドカップに行かないと何も話にならない。バランスを見ながら、さっきも言ったように多少自分のエゴも出せるような、チームに落とし込めるように意見ができたら」
自らのエゴイズムを巧みに操りながら、チームの大きなパワーに変えていく。困難ではあるけれど魅力的な新しい挑戦は、見る者も惹きつけるのではないだろうか。