3月20日の北中米ワールドカップ・アジア最終予選7節で、日本はバーレーンに2-0で勝利を収めて8大会連続8回目のW杯出場を決めた。序盤から相手の堅い守備に苦しむ展開の中、1ゴール1アシストの活躍を見せ、チームを勝利に導いたのが久保建英だった。

上写真=終盤にゴールを決めて勝利を決定づけた久保建英(写真◎小山真司)

直前で判断を変えてシュートを打った

 文字通り、久保建英は日本中が注目する試合で主役になった。

 前半からバーレーンの堅い守備を崩そうと奮闘した。鋭いドリブルとパスでチームを前進させ、プレースキックでチャンスを演出。相手ゴールに迫っていった。

 前半は圧勝した前回対戦とは異なり組織立った守備を見せる相手に苦しみ、スコアレスで終えたが、後半、久保がその才能でゴールをこじ開けた。

 まずは66分。伊藤洋輝のクサビのパスを収めた上田綺世からのスルーパスに反応。右から左へと走り込みながらボールを収めると、後方から交差するように走り込む鎌田大地へ絶妙なパスを送った。

「鎌田選手が後ろから走ってきたときに出すというのは決めていた。より鎌田選手に優しいパスを出そうと考えたときに、自分が行くふりして縦にグイッと行くことで相手は僕が自分で行くだろうと思っていた。そこで相手の重心が後ろになったところで、パスを出すならどこだろうなって。僕自身はあとは決めてくれと思っていた」

 相手DFを引きつけてボールを届けた結果、鎌田はフリーでシュートを打つことに成功。日本に先制点が生まれた。

 そして87分、今度は久保が勝利を決定づけるゴールを叩き込んだ。左CKの場面。キッカーとしてショートコーナーを選択すると、伊東純也からのリターンパスを引き出し、ボックス左に進入。縦に鋭く持ち込み、角度のないところから左足でニアサイドを射抜いた。

「本当はCKを直接蹴るつもりだったけど、相手が後ろを向いていたので、伊東選手に出した。そこからデザインされたセットプレーの中で、僕が直前で判断を変えてシュートを打った。結果、入って良かったです」

 伊東は「建英がスピードに乗って仕掛けられるようにパスを出した。本当はクロスかと思ったけど、アシストになってよかった」と話していたが、誰もがクロスを想像する場所から、久保はシュートを放ち、チームに2点目をもたらした。

「何をしようか迷っていたけど、結果、何かあれは…先走っちゃった」

 ゴールが決まると、久保はユニフォームを脱ぎ捨て喜びを爆発させた。スタジアムが大きな歓喜に包まれた瞬間だった。

「何よりもみんなを安心させたいという気持ちでプレーしていた。みんな少し前半は負けてもいいはずの試合なのに、負けちゃいけないみたいな感覚があって。プレーしていたら少しロングボールの精度だったり、いろんなところで、気持ちは入っていたけど、ちょっと空回りじゃないけど、硬さも見えていた。そのなかで僕自身は動きも良かったので、何とか結果を残してチームを落ち着かせたい、楽にしたいと思っていた。アシストのところはすごいうれしかった。ゴールもかもしれないけど」

 チームのために全身全霊でプレーした。そして大一番で勝利の立役者になった。

「今まで個人的にはラッキーではなかった、代表では。今回は実力でちゃんと決めたゴールだと思うので、実力が上がってきたことがすべてかなと思う」

 所属するソシエダで見せているほどの活躍を、これまで代表で示せていたかというと、答えはノーだろう。しかし最終予選の重要な一戦で、久保は勝利に貢献し、その力を満天下に示した。

「(前回予選)W杯が決まるときにはベンチで見ていましたけど、W杯では最初から出ているので、そういった意味では(自分も)W杯ではスタメンかもしれないし、きょうスタメンだった僕らもベンチになるかもしれない。それはここからの1年で代表はどう変化していくか、自分がどう変化していくか(にかかっている)。そのときいなかった選手がW杯でメンバーに入る可能性もある。みんながみんな自チームに帰って日々精進していくことが大切」

 久保にとっては、この日の大活躍も当然ながら通過点。さらにその実力に磨きをかけて、次はW杯本大会で再び無双し、主役になるーー。


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