上写真=帰化選手を多数擁して急成長を遂げているインドネシア代表(写真◎Getty Images)
14人中12人が元々はオランダ国籍
9月から10月にかけてのインドネシア代表の成績は3分1敗。10月シリーズの2戦目で中国代表に敗れたものの、サウジアラビア代表やオーストラリア代表と引き分けるなど手堅く勝ち点を積み重ねている。
日本代表戦で目指すのは、もちろん最終予選での初勝利だ。今年1月のAFCアジアカップグループステージ第3節で日本代表に敗れた時とは全く別のチームになったと言っても過言ではない。
2022年10月に152位だったインドネシア代表のFIFAランキングは、2024年10月に130位まで上昇。直近2年間でこれほど大幅なジャンプアップを果たした国は他にないだろう。
急成長の背景には、インドネシア代表が取り組む独特な強化策がある。彼らは世界中に散らばるインドネシアにルーツを持った選手を帰化させ、続々とA代表に招集しているのだ。今回の招集メンバー27人のうち過半数の14人が帰化選手で、うち12人はもともとオランダ国籍の選手だった。
オランダは1949年までインドネシアを植民地としていた。そうした歴史的背景が巡り巡って、インドネシアサッカー協会が推し進める代表チームの強化施策に結びついている。
そして、11月シリーズにも新たなオランダからの帰化選手がインドネシア代表に加わった。直前にインドネシア国籍の取得を完了したばかりのDFケヴィン・ダイクスは、11月12日からインドネシア代表に合流。日本代表戦にも出場可能とされ、インドネシアメディアの記者たちは「シン・テヨン監督ならいきなり先発起用するのではないか」と見ている。
現在デンマークの強豪コペンハーゲンで主軸を担うダイクスは、インドネシア代表の中でも随一の実績を誇る。フィテッセの下部組織出身で、フェイエノールトやコペンハーゲンの一員としてUEFAチャンピオンズリーグにも通算17試合出場。スピードや敏捷性に長けるセンターバックで、クラブではPKキッカーを任されるほど技術力も高い。
他にも水面下で帰化の手続きを進めている選手が複数おり、今後も欧州からどんどん新戦力が入ってくるはず。インドネシア代表は地元出身の有望な若手選手も着実に力をつけており、全盛期の欧州出身選手たちとの融合がうまくいけば「インドネシア」としては初のW杯出場権獲得も夢ではない。チームとしての目標は日本やサウジアラビア、オーストラリアと同居したグループで4位に入ってプレーオフ(4次予選)に進むことだというが、もっと上を目指せるポテンシャルを秘めていそうだ。
とはいえ5-4-1のブロックを組み、守備的に戦う試合が多いのが現状だ。サウジアラビア戦やオーストラリア戦は40%を切るボール支配率ながら粘り強く守って勝ち点1をつかんだ。日本代表に対しても、ある程度割り切って守りを固めてくることが想定できる。
欧州からの帰化選手はとりわけディフェンスラインに多く、ダイクスの他にはセリエAのヴェネツィアで活躍するジェイ・イツェス、U-21スペイン代表歴を持つジョルディ・アマト、そして今回は負傷によりメンバー外だがオランダ1部のトゥエンテで主力を担うミーズ・ヒルハースという若手の有望株もいる。NECナイメヘンで小川航基とチームメートのカルフィン・フェルドンクも、左サイドバックを主戦場としながらセンターバックとしてもプレー可能だ。
日本代表が押し込む展開になった時には、アジアのレベルを超えた3人のセンターバックをどれだけゴール前から引き剥がしてスペースを作れるかが鍵になるだろう。そのうえでリスク管理を徹底し、サイドのスピード豊かな選手たちを生かしたカウンターを警戒したい。
終盤には東京ヴェルディでもプレーした経験のあるプラタマ・アルハンが登場し、アジアカップの日本代表戦や10月の中国戦でもゴールにつながったロングスローを多用してくるはず。ハーフウェーラインを超えてインドネシアにスローインの機会を与えたら、全てゴールチャンスになると考えて臨む必要があるだろう。