上写真=バーレーン戦の81分にネットを揺らした小川航基(写真◎Getty Images)
「日本の中で僕が一番」という思い
バーレーン戦の65分、2ゴールを決めたFW上田綺世に代わって小川はピッチに立った。前節の中国戦でも79分に同じく上田に代わって途中出場を果たしているが、プレー時間が短いこともあってネットを揺らすことはできなかった。
その中国戦のあとには「本当に力のある選手たちがそろっていると思いますし、ただその中で残り10分しか出られなかった悔しさがある。一番てっぺんのところはやっぱり自分だってずっと思っているので、悔しいです、やっぱり」
てっぺんが意味するところは、1トップのポジション。ただ、その言葉にはFWの中の最上位という意味も込められているように感じた。
今回の活動中には小川のこんなコメントも聞かれた。
「僕自身は今、日本にいる中で僕が一番点を取れると思っている」
強烈な自負を感じさせる。初挑戦の海外、エールディビジでいきなり2ケタゴールを挙げた事実は小川の自信を元になっている。ただ、本人いわく「常に自分はそう思ってきた」。点を取ることに関して誰にも負けたくないと言い切る。
「今度こそ」の思いで臨んだバーレーン戦の81分だった。途中出場から16分後のこと。
ボックス左で同じく途中出場の中村敬斗が仕掛け、左足を振り抜く。相手GKにストップされたが、高く上がったこぼれ球に小川は誰より早く反応。打点の高いヘディングシュートを叩き込んだ。
「相手が引いていたというか、だいぶ自分たちのペースになってきて、相手のパフォーマンスも落ちてきた中で、ゴール前に僕がいることで点を取るというその能力を評価して(ピッチに)入れてくれたと思う。その中で取れてよかったと思います」
ただし、1点を取っただけ、しかも5−0の勝利の5点目を奪っただけでは小川の心は満たされない。
「特に一喜一憂していなくて、言ってしまったら5点目だったので。最終予選という大事な舞台で、今後はもっと緊迫した試合で僕の力が必要になる場面がたくさん出てくると思う。そういうもっともっと大事な場面で点を取れるように、しっかりと常に準備したいと思います」
この日、先発で「てっぺん」を務めた上田は先制点を含む2ゴールを記録し、チームの勝利に貢献した。小川は刺激を受けないはずがない。次回、10月シリーズはアウェーでサウジアラビア、ホームでオーストラリアとの連戦になる。早くも最終予選、最初の山場が訪れる。
「(シーズン前に)ケガもありましたし、日本代表の試合とチームの試合の兼ね合いの中でコンディションをしっかりと整えないと、(クラブと代表の)どちらでも活躍できなくなってしまう。しっかりと自分の体を見つめ直して、やるところと休むところ、自分の体を知るところからしっかりやりたいと思っています」
小川は必要とされた時に自らの力を示せるように、常在戦場の心持ちで準備を進めていく。
取材・文◎佐藤景