日本が敗れた。2月3日のアジアカップ準々決勝で、イランに逆転負けを喫して大会から姿を消した。振り返れば、冨安健洋が本当のリーダーに成長した大会だったと言えるのではないだろうか。その言葉ににじむ悔しさが、さらにリーダーシップを高めることになる。

上写真=冨安健洋は大会を通してチームを鼓舞し続けた(写真◎Getty Images)

■2024年2月3日 アジアカップ準々決勝(@エデュケーション・シティ/観衆35,640人)
イラン 2-1 日本
得点:(イ)モハマド・モヘビ、アリレザ・ジャハンバフシュ
   (日)守田英正

「勝ちに値する試合ではなかった」

 アジアカップ2023は日本にとって、ベスト4にすら進めなかった悲劇的な大会として記憶されるだろう。ただもう一つ、記念碑的な意味合いを持つとすれば、冨安健洋が日本代表の本当のリーダーになった大会だと振り返ることができるだろう。

 その言葉は透明度の高い分析力と説得力に満ちていて、理力がにじみ、深い示唆に富んでいる。大会中にも厳しい言葉を何度も自分たちに投げかけていたし、散々な結末の黒星を喫して大会から蹴り落とされた試合の直後であってもそうだった。

「勝ちに値する試合ではなかったかなと思います。特にセカンドハーフは完全に相手に流れを渡してしまいましたし。彼らが勝利に値したんだと思います」

 28分に守田英正が先制ゴールを決めて首尾よく試合を運んでいたのだが、後半に一変。ロングボールを繰り返し放り込んできたイランに押し込まれる格好になって、後手に回った。55分に同点とされたあと、アディショナルタイムにはPKを決められて逆転負け。ロングボールでフィジカルを生かして押し込んでいく、という、日本を攻略するための最も効果的で最もシンプルな方法に、まんまとやられたわけだ。

「前半はリードして終えましたけど、前半の最後の方も結構きつい時間帯があって、こういう時間帯は絶対あるぞと言っていました。だから後半に入って点を取りいくぞとは言っていましたし、何本かチャンスがあった中で決めきれずに、そこから完全に相手に流れが渡ってしまった。ここで耐えないといけないとずっと思いながらやっていましたし、後ろから声も出してやろうとはしてましたけど、なかなか難しい部分もあります」

 難しい、とはどういうことか。

「良くないときの日本というか、ちょっと良くない時間帯になってきたら、シンプルにボールを失うとか、ちょっと淡白なプレーになった。その分、僕ら(最終ライン)も 前にボールが渡ったあとにラインアップしないといけないところを、やっぱりすぐ失ってしまうとギャップもできてしまいます。その中でスペースを相手に与えてしまって、僕らもダッシュでスプリントしてあげないといけない部分ではあった」

 そんな90分を総評して、一言で言えばこうなる。

「まあ、すべてが足りなかったんだと思います」

 最後にPKを与えてしまったシーンには、悔しさしか残らない。右からのヘッドでの折り返しに板倉滉がジャンプしたものの頭上を越え、その後ろにいた冨安がクリアしようとしたが接触を避けたのか足を振らず、こぼれ球に板倉が反応したところで相手の足を蹴った格好になったもの。悔やみきれない。

「まあ、なんて言うんだろう、ベタにはなっちゃいますし、(グループステージで敗れた)イラク戦のあとにも言ったのであんまり言いたくはないんですけど、今日の負けがあったから強くなれたと言えるようにならないといけないですし、これから所属チームに帰ってそれぞれができることをやらないといけないなと思います」

 アーセナルに戻って、冨安は何をするか。リーダーとして覚醒した男の未来に注目しないわけにはいかない。


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