北中米ワールドカップのアジア2次予選に追加招集された渡辺剛(ヘント/ベルギー)が、11月16日に行われたミャンマー戦で後半から途中出場。2019年12月のE-1アジア選手権以来となる日本代表復帰を果たした。

上写真=後半から谷口彰悟に代わって登場した渡辺剛。約4年ぶりにA代表でプレーした(写真◎毛受亮介)

すごく悔しかった

 国内組で編成されたE-1での代表デビューから約4年。東京五輪世代のセンターバックがようやく“A代表”のピッチに立った。この期間、同年代の選手たちが東京五輪やカタールW杯で躍動。彼らの姿を「すごく悔しかった」という思いで見てきたという。

 渡辺自身は2022年1月にFC東京からベルギー1部のコルトレイクへ移籍。昨シーズンはリーグ全体のフィールドプレーヤーで唯一の全試合フル出場を記録し、今夏からベルギーの強豪ヘントへステップアップ。パワフルな巨漢FWたちと日常的に対峙する中で代表への想いを強く抱き続け、「結果を出し続ければ、どこかのタイミングでチャンスはある」と代表招集を信じて成長してきた。

 いつ呼ばれても結果を出したいという気持ちから、入念な情報収集も怠らなかったのも特筆すべき点だ。

「誰が代表に選ばれたのか、誰が試合に出たのか、センターバックに何が求められているのかも含めて、(森保ジャパンの試合は)全部チェックしていました。どういうプレーをしてほしいのか、どういう選手が生き残っているかも分かっていましたし、すべてがいい意味で刺激になって、ここまで来ることができたと思います」

 ミャンマー戦はリードが広がった後半から谷口彰悟に代わって起用され、町田浩樹と最終ラインでコンビを組んだ。ハーフコートに押し込む展開が続いたこともあってセンターバックとしての見せ場は少なかったが、セットプレーからのヘディングで惜しいシーンを作り、攻撃に変化を加える縦パスを入れることもできた。高い位置でボールを奪うためのポジショニング、奪ったボールのつなぎ方やカウンターへのリスクマネジメントもスムーズで、ベルギーからの移動トラブルで試合前日に合流したとは思えない順応性を見せた。

「(前半途中に後半からの起用を聞いて)心も体も準備はできていた。リードしていてやりやすい状況ではあったけど、代表を見ていたらやりたいことは分かっていた。しっかりつなぐことを意識できたし、自分の持っているものは出せた。縦パスも海外で挑戦してきたこと。今までは守備で評価されてきたけど、攻撃も必要になる時代にアジャストしてきた結果がああいうパスにつながったと思う。チームでは結構点を取れているので、チャンスで決めて結果を残したかった。そこは次に決められれば」と“A代表デビュー戦”を充実の表情で振り返る。

 森保監督も試合後の会見で「守備では高さやコンタクトのところで落ち着いた対応を見せてくれた。普段からヨーロッパで激しく、厳しく戦っているからこそのプレー」とベルギーリーグで優勝争いをするチームでの経験を評価。「代表での経験と刺激が彼の成長につながれば」と期待を寄せていた。

 もちろん今回の試合だけで彼の実力を見極めるのは難しい。ミャンマー戦の出来を聞かれた渡辺自身も「今日は60点。まだまだやれることがある。本当はもっと強い相手のほうが自分の良さを出せる」と強豪相手の出番を手ぐすねを引いて待っている状況だ。

 持ち前の強いメンタルに加えて、的確な分析力とベルギーでの経験でスムーズに森保ジャパンの一員となった印象を受ける。これから巡ってくるであろうチャンス次第で、主力にのし上がる可能性は十分にあるだろう。充実の顔ぶれがそろう日本代表のセンターバック陣。その熾烈なポジション争いに、26歳の遅れてきた“新人”が名乗りを上げた。

取材・文◎青山知雄


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