上写真=ガンバ大阪所属のチュニジア代表イッサム・ジェバリ(写真◎舩木渉)
スーパースターがいないから組織的に戦う
サッカー日本代表は17日、キリンチャレンジカップ2023でチュニジア代表と対戦する。
最新のFIFAランキングで19位の日本代表に対し、チュニジア代表は29位につけている。2022年のカタールワールドカップではグループDの3位となり決勝トーナメントに進めなかったが、FIFAランキングにおいてアフリカ3番手につける実力国だ。
思い出してほしい。カタールワールドカップを5ヶ月後に控えた2022年6月、日本代表はチュニジア代表に0-3で敗れている。国際親善試合ではあったがチュニジア代表のモチベーションやプレー強度は非常に高く、サムライブルーは大いに苦しんだ。
失点はいずれもミスが絡んでのものだ。序盤からアンカーの遠藤航を狙い撃ちされ、ビルドアップで手詰まりになっていた日本代表は、度々不用意なミスからカウンターを食らい、ディフェンス陣が致命的なミスを連発した。チュニジア代表の組織的なプレッシングや勇猛果敢な速攻の勢いは最後まで衰えなかった。
ガンバ大阪でもプレーするイッサム・ジェバリは「僕たちの最大の強みは組織的なディフェンスだ」と言い切る。そしてこう続けた。
「チュニジア代表にはスーパースターがいない。だから僕たちはチームとして戦う。コンパクトに守り、ボールを奪ったらカウンターへ。それが僕たちの武器だ。もちろんテクニックに優れた選手もいるから、ボールを保持することもできる。だけど、まずは力強く守ることが第一。それからボール保持のことを考えなくてはならない」
2022年1月に就任したジャレル・カドリ監督のもと、チュニジア代表は粘り強い守備からのカウンターを磨き上げてきた。カタールワールドカップを経ても、チームコンセプトは変わっていない。だが、ジェバリは「日本代表との戦いは、前回と全く違った展開になると思う」と予想する。
「もちろん前回の対戦のことはよく覚えているし、チームにとっても素晴らしい経験だった。でも、あの試合のことはもう忘れなくてはならない。日本代表は前回対戦時とは大きく違ったチームになった。彼らは非常にいい時期を過ごしているし、今回の試合に向けていい準備ができていることもわかる。そのことを頭に入れておかなくてはならない。チュニジア代表のこともよく知っているだろう。でも、僕たちもいい準備ができているし、以前とは変わったところもある。スタジアムは満員になって僕たちにとって難しい雰囲気になるだろうから、それを想定した準備もしなくてはならない」
昨年の日本代表戦当時、チュニジア代表は4-1-4-1を基本システムに採用していた。だが、カタールワールドカップ直前で3-4-3に切り替え、現在は試合によって4バックと3バックを使い分けている。
今年に入ってからは主にアフリカ選手権予選で4-1-4-1を、国際親善試合で3-4-3を採用する傾向にある。主に格下との対戦になるアフリカ選手権予選と、アルジェリア代表やエジプト代表、韓国代表など実力的に拮抗する国際親善試合で採用するシステムを変えているようだ。
直近の韓国代表戦は0-4の大敗だったが、フランスのアンジェでプレーするヤン・ヴァレリーが「時差ボケがひどく、どうしようもなかった」と明かしたようにコンディション面に大きな不安があったのは否めない。より良い状態で臨める日本代表戦は、彼らがディフェンス面で最も力を発揮できる3-4-3で挑んでくるのではないだろうか。
そして、ジェバリは1年ぶりの日本代表戦を心待ちにしているようだった。「僕にとって特別な日になるだろう」とモチベーションは高ぶる一方だ。
「チュニジア代表の一員として戦えるのは名誉なことだ。でも、今回はそれだけじゃない。僕は家族と一緒に、大好きな日本に住んでいる。ガンバへの移籍が動き始めたのは、ワールドカップが終わってからだった。1年前に日本でプレーすることになるとは全く考えておらず、こうして日本にいられるのは偶然の賜物だと言える。
僕は日本のことが大好きになった。そして、チュニジア代表の選手たちも日本の文化を愛している。僕は彼らに日本で見聞きした様々なことを伝えた。来日してから、みんなが『それは何?』『あれは何?』と聞きまくってくるからね(笑)
僕自身もこの国で本当に素晴らしい日々を過ごせているし、日本文化へのリスペクトも高まっている。もちろん自分を歓迎してくれて感謝してもいる。ぜひ明日はスタジアムに来てもらいたい。僕たちは皆さんが楽しめるような試合をして、チュニジア対日本というカードでまたいいものを見せられたらと思っているよ」
韓国代表戦では出番がなかったジェバリ。時差ボケもなく、コンデイションは万全だろう。前回対戦時に日本代表からゴールを奪ったストライカーは守備が武器のチュニジア代表において、カウンターを完結させるキーマンにもなりうる。粘り強いチームディフェンスのみならず、ガンバで輝くジェバリにも警戒が必要だ。
取材・文◎舩木渉