親善試合で6連勝を飾り、圧倒的な得点力を示している現在の日本代表だが、1トップにはまだ絶対的な存在がいない。11月始まる北中米ワールドカップ・アジア2次予選は登録メンバーが26人から23人になるが、果たして誰が定位置を確保するのか?

上写真=左から上田綺世、古橋亨梧、浅野拓磨(写真◎JMPA毛受亮介=左2点、福地和男)

三者三様、いずれも持ち味を示した10月シリーズ

 チュニジアとの対戦はスコアこそ2-0ながらプレーの内容で完勝だった。日本代表はこれで2023年の国際Aマッチで6連勝、この6試合で実に24ゴールを挙げた。森保一監督は基本的に4―2―3―1と4-1-4-1(4-3-3)で臨み、相手と状況によって3バックの3-4―2-1を採用する戦いを続けている。好結果を残す中で同監督が理想とする「3チーム分の戦力」も整いつつあるが、いくつかのポジションではまだ不確定要素が見られる。

 その最たるものが1トップのポジションで、10月シリーズではカナダ戦で浅野拓磨が先発、72分から古橋亨梧が代わってプレー。チュニジア戦は古橋がスタートから出場し、後半開始から上田綺世がプレーした。これまでも9月のドイツ戦では上田が先発し、59分に浅野へ交代。トルコ戦では古橋がフル出場。6月シリーズでもエルサルバドル戦では上田が先発し、65分に古橋が登場。同時間に久保建英に代わった浅野は右サイドでプレーした。ペルー戦では古橋がスタメンからプレーして、61分に前田大然に代わった。

 3月のコロンビア戦では町野修斗が起用されていたがその後はメンバーから外れており、現状では浅野、古橋、上田の3人が1トップのポジションを争っている。6月シリーズからの結果を見ると、上田と古橋が2ゴールずつ、浅野は1ゴールと、チームの合計が24ゴールであることを思えば、いずれも物足りない数字と言わざるを得ない。

しかし、10月シリーズのプレーを見ると、カナダ戦で72分プレーした浅野は2点目の相手のオウンゴールを誘発する左サイドからの突破、3点目の中村敬斗のゴールを自ら奪ったボールを持ち込んでアシストして2点に絡んだ。さらにこの試合では後方からのボールを巧みに収めて攻撃の起点となるプレーを繰り返し、守備でも精力的なプレッシングを見せた。

 ストライカーとしてのタイプでは、前線で収めるポストプレーヤータイプは3人の中では上田が該当し、浅野と古橋はスピードを生かしてディフェンスラインの裏へ抜け出すプレーを得意とするタイプ。しかし、カナダ戦の浅野はポスト役としても効果的にプレーできることを示した。これまで、カタール・ワールドカップのドイツ戦での逆転ゴールのように重要な試合で勝負強さを発揮して森保監督の信頼を得てきた浅野だが、クラブでのプレーが今一つの時期もあり、コンスタントに選ばれていることを疑問視する声も聞こえた。だが、チュニジア戦では大きく成長した姿を示し、森保監督の信頼をさらに厚くしたと言えよう。

 古橋はこれまで代表では本来の持ち味を出し切れていなかった。カナダ戦でも終盤に旗手怜央からのパスを受けて右へ出し、川辺駿にフリーでシュートさせるなど好プレーもあったが、少ないプレー時間の中とはいえ自らシュートに持ち込むことができなかった。しかし、チュニジア戦の前半終了間際に旗手怜央のパスが相手DFに当たってこぼれるところを抜け出して先制点を決め辛うじて合格点を得たと言ったところ。鋭い飛び出しとディフェンスとの駆け引きのうまさは疑いの余地がない。

 一方で上田はチュニジア戦の後半45分をプレーしてノーゴール。結果を見れば今回一番印象が悪いが、それでもなかなかシュートを打てる状況にならない中でポテンシャルの高さを示した。唯一放ったシュートは73分にペナルティーエリア内で左からのパスを受けてDFを背にしながら反転し、難しい角度から左足で強くたたいてポストに当てた。上田ならではの動きとシュートのうまさを見せたシーンだった。

空中戦での高さやポストプレー、スペースを作る動きなども他にはない能力を垣間見せて、やはり現状でポストプレーヤーとしては図抜けている印象を残した。Jリーグのヴィッセル神戸で存在感を示す大迫勇也を復帰させる選択肢もあるが、森保監督が上田を外すことは考えにくい。

 というように3者3様ながらいずれもネガティブな要素は少ない。次の招集は北中米ワールドカップ予選となり、登録できる選手の数が26から23に戻るため一つのポジションに2人以上を選ぶのは難しくなる。それでも森保監督は3人とも残すのではないか。他のポジションでは複数をこなせる選手を選んでも前線には多くの選択肢を保っておきたいはずだ。

 もっとも、絶対的な1トップが定まらない中でも、6試合で24点を挙げる攻撃力があるなら大きな問題ではないのかもしれない。この6試合では実に13人が得点し、どこからでも取れることを証明している。決定力不足が叫ばれていたつい数か月前を思えば何たる進歩だろうか。

文◎国吉好弘


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