上写真=途中出場の久保が2アシスト。最後の反攻するドイツの心を折った(写真◎Getty Images)
■2023年9月9日 国際親善試合(@フォルクスワーゲン・アレナ/観衆24,980人)
ドイツ 1-4 日本
得点:(日)伊東純也、上田綺世、浅野拓磨、田中碧
(ド)レロイ・サネ
常に先手を打つ堂々たる戦い
世界的な強豪国とのアウェー戦。しかも相手はカタールW杯で日本に敗れており、モチベーションも高い。だが、日本は堂々たる戦いを見せた。相手のプレスを恐れず外し、ボールを繋いで何度も前進。守備でも相手を受け止め、捕獲し、攻めに転じた。カタールW杯からの進化を示してみせた。
守備の局面では立ち上がりに深い位置まで追いかけて前向きのボール奪取を狙い、10分を経過すると状況を踏まえて4−4−2でミドルエリアにブロックを組んで対応。板倉と冨安のCBコンビの存在が守備面で大きな安定感と安心感を与え、必然的に最終ラインの設定も下がりすぎることはなかった。全体をコンパクトに保つことでドイツが自由に攻撃することを封じていく。
裏に抜けてくるニャブリやハヴェルツには冨安が抜群のスピードを生かして対応。「いい守備からいい攻撃」は森保監督が何度も口にしてきた言葉だが、まさにその通りに試合は進んだ。
11分、左CBの冨安が大きく右に展開すると、鎌田がためを作って菅原の攻撃参加をサポートする。シュロッターベックをかわして右サイド深く進入した菅原の低いクロスを、リュディガーと競り合いながら伊東がニアで触り、ネットを揺らした。日本が見事な連動で先制に成功してみせる。
重心を下げすぎず、ミドルエリアに入ってきたドイツの選手を確実に捕獲していた日本だが、19分に右サイドで囲い込みを突破され、バランスを崩された。ギュンドアンからヴィルツへパスを通されると、さらに左で待っていたサネへの展開をされてしまう。スライドが間に合わず、手薄になったところを狙われてサネにゴールを決められた。
だが、ここで日本は地力を示す。すぐさまリードを奪ってみせたのだ。右サイドでパスを受けた伊東から鎌田を経由して菅原につなぐ。菅原はまたも低いクロスを供給。飛び込んだ伊東が触ったボールが上田の元へ。急に方向が変わって足元にきたボールに対して上田は素早く反応し、ゴール右へ流し込んだ。
前半の終盤にもシュロッターベックからリュディガーに送られたボールをカットして上田が独走。決めきれなかったが、前半は完全に日本のペースで終了した。
迎えた後半も日本の持ち味が出た。ドイツは圧力をかけて前に前にへとボールを運んできて、日本の左サイドではサネが危険なプレーを見せていたが、59分に谷口を投入し、右から板倉、谷口、冨安と3人のCBを配置。伊藤洋は左の大外でしっかりサネを見張り、右のアウトサイドでは菅原がニャブリに対応。日本は5−4−1に形を変えてきっちり対応した。
人数の面では後ろに重たくなったが、それでも決して引きすぎることはなく、中盤でもしっかり相手のボールホルダーにプレッシャーをかけられる位置をキープしていく。前半よりはボールを握られるシーンは増えたものの、日本がドイツから前向きの守備でボールを奪って攻めに転じる場面も作り出した。70分には三笘のパスから浅野が抜け出し、決定的な場面を迎えたが、シュートは惜しくもGKの正面をつく。
日本はその後も疲れの見える選手を交代させながら強度を維持。相手のドイツもミュラーを投入するなど流れを変えるべく手を打ったが、日本の堅守を崩すことはできず。
一方で日本は途中出場の選手たちが躍動する。終了間際に久保の2アシストから浅野拓磨、田中碧がそれぞれネットを揺らし、4−1で勝利を飾った。
「選手たちが自信を持って同じ目線で戦ってくれたことは、今後にもつながると思います」(森保監督)
リベンジを誓って臨んだ相手を最高の形で返り討ちにした日本。スタジアムには不甲斐ないドイツの戦いぶりにブーイングが鳴り響いていたが、衝撃的な結果を導いたのは、日本が狙いを持って戦い、ピッチで見事に実行したからに他ならない。
取材◎佐藤景