日本代表は2日、パラグアイと強化試合を行ない、4-1で快勝した。出場した選手が一様にアグレッシブな姿勢を示した中でもひと際、印象的なプレーを見せたのが伊藤洋輝(シュツットガルト)だ。森保一監督もデビュー戦らしからぬそのプレーを高く評価した。左サイドバックの序列を変える存在になるかもしれない。

上写真=前半は左サイドバック、後半からはCBとしてプレーした伊藤洋輝(写真◎Getty Images)

高さ、強さ、正確な左足、そして攻撃参加のタイミング

 パラグアイ戦の収穫の一つとして多くのサポーターが、そして識者が伊藤洋輝の存在を挙げている。確かに代表デビュー戦にしてそのプレーは実に印象的で、実際、効果的だった。左サイドバックとして先発し、後半からはCBを務めた。二つのポジションで「試された」のは、森保一監督の期待の表れでもあるだろう。

 伊藤がチームにもたらしたものが、いくつかある。まずは高さ。ゴールにはつながらなかったが、186センチの長身を生かしてCKの際にゴール前に飛び込み、ゴールにつながらなかったものの、相手の脅威になった。次にキック。ボランチとしてプレーしていたユース年代の頃から、そのキックの多彩さと精度は目を見張るものがあったが、パラグアイ戦ではロングレンジのパスとサイドチェンジがとくに目を引いた。

 浅野拓磨のゴールを生んだ起点のパスも、伊藤の左足からだ。1トップで相手DFを背負う浅野に正確にボールをつけた。本人は「ちょっとプレッシャーをかけられたので、そのプレッシャーを回避するために、拓磨くんが目に入ったから(パスを出した)。なるべく低く蹴ろうとしましたけど、高いボールをなんとか収めてくれたので。僕というよりは拓磨くんが収めてくれたことに感謝したいです」と謙虚に振り返ったが、高低の問題はあったにせよ、左右のブレなくボールを届けている。

 伊藤のパスを起点に、収めた浅野がサポートに来た原口元気にボールを落とし、瞬時にラインブレイクを試みて再びボールを引き取り、ネットを揺らした。

 空中戦の強さ、そしてキック精度。これらは伊藤の特長と言っていいだろう。さらにもう一つ、チームの攻撃を加速させることになった特長もピッチで示された。攻撃参加のタイミングだ。この日の日本は左の伊藤から右へのサイドチェンジ、そして右の堂安から左への大きな展開が見られた。幅を使った攻撃で相手を揺さぶったが、開始5分の場面は伊藤の持ち味が存分に表れた。カットインした右の堂安から左サイドに構える三笘薫にボールが送られたタイミングで、伊藤は迷いなく走り出していた。三笘の内側をそのまま伊藤が疾走。パスを引き出してクロスを送り、堂安のシュートを導いた。

「薫くんがドリブルで仕掛けられる選手なので、その邪魔をしないようにではないですが、効果的な関わりができるようにと思っていました。何回かクロスまでいけたので、これからタイミングや精度をもっと高めていきたい」

 連係を深めるほどの練習時間はなかったはずだが、サイドバックとして求められる攻撃センスを感じさせるプレーだった。森保監督もデビュー戦に臨んだ23歳のDFを高く評価している。

「A代表初招集で、今日の舞台に立ったという部分、いろいろ彼も期する思いであったり緊張もあったと思いますけど、彼の持っているポテンシャルを示してくれた。守備の部分ではチームでやっているように、タイトに守備をしていくというところ、高さも含めて彼の持っている身体的な能力と戦う姿勢を出してくれました。攻撃の部分でも起点になれる、そして味方のポジションを助けるフリーランニング等々で、非常に意欲的でアグレッシブな姿勢を見せてくれたと思います」

 この日のプレーで、これまで左サイドバックを務めてきた選手たちは大いに刺激を受けたことだろう。後半から左サイドバックを務めた中山雄太、そして長く日本の左サイドをけん引してきた長友佑都も、安穏とはしていられないはずだ。

 後半から務めた左CBのポジションでは、1対1の強さを示したものの、ミスもあり、59分には失点につながるパスミスを犯した。「完全に読まれていたので、CBがリスクをかけてまで縦パスを入れる必要はないと感じています。ミスから失点につながるのは、今日失点して感じました。2度とないように、リスクを負わないようなプレーをしていかないといけない」と試合後は伊藤も反省しきり。ただ、指揮官は「失点の部分であったり、ボールをつなぐ、守備から攻撃につなぐところでいくつかミスがありましたけど、トライした上でのミスだったと思うので、そこはこれからもミスを恐れることなくチャレンジ精神を持ってやってほしい。非常に素晴らしいチャレンジをしてくれたと思います」と、その姿勢を称えた。

 この日の90分をもってすぐに序列が変わるわけではないだろう。ただし、左サイドバックのポジション争いが、これまで以上に熾烈になったのは間違いない。大きなインパクトをもって、伊藤はデビュー戦を終えた。

取材◎佐藤 景


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