3月24日、日本代表はアウェーの地で大一番を迎える。カタールW杯出場権をかけて、アジア最終予選のオーストラリア戦に臨むのだ。ここではJリーグの各クラブでアナリストを務め、2019年には横浜F・マリノスの優勝に貢献した杉崎健氏に、注目の一戦のポイントについて解説してもらった。

日本の有効な手立ては?

画像: 右サイドバックで先発が予想される山根視来。そのプレー位置に注目だ(写真◎JFA)

右サイドバックで先発が予想される山根視来。そのプレー位置に注目だ(写真◎JFA)

――これまでの話の中でもオーストラリア戦のポイントをいくつか挙げてもらいましたが、日本はどんな戦いをするのがベストでしょう。

杉崎 まずはリードしてしまえばいい、という話だと思っています。相手はオマーン戦、ベトナム戦もそうでしたが、基本的にはサイドバックとサイドハーフを置いていた。今回もそれは変わらないと考えます。そしてサイドハーフの起用される選手が、誰になるのか。おそらく右はボイルだと思いますが、左のレッキーは鼠径部を負傷し、招集を辞退しました。そうなるとメイビルかなと思いますが、オーストラリアのサイドハーフは、守備の局面で日本代表のサイドバックに対して前に出やすい傾向があります。相手が出て来たときの背後をいかに使うかが日本にとってはポイントになるのではないかと見ています。

――その上で伊東の1対1の強さ、速さを生かすということでしょうか。

杉崎 前回の対戦では、相手の左サイドバックのベヒッチを伊東が早々にぶち抜きました。あの場面は1対1の状況が作れていたからこそできた。今回もそういう状況を作りたいところです。その意味で右サイドバックの立ち位置が非常に重要だと思っています。相手のサイドハーフが自陣深く戻ってしまうと、伊東の1対1の強さを生かせなくなる可能性がある。日本の右サイドバックがあえて低い位置で受けて、相手の左サイドハーフを喰いつかせて伊東に勝負させても良いし、逆で作ってからアイソレーションする(逆サイドで1対1の勝負をさせる)展開もいいと思います。1対1で質的優位を作って、いかに個人で殴るか。オマーン戦のオーストラリアもそうでしたが、ベヒッチ、カラチッチという両サイドバックは背後をあっさり取られることがある。そこは一つ狙い目だと思います。オーストラリアのCBのセンズベリーもデゲネクもあまり出てこない選手なので、サイドで深い位置を取れると思いますし、そうなれば崩すことはできる。サイドハーフを引き出せたら、結構、簡単に奥は取れるんじゃないかなと。

――仮にサイドハーフがあまり出てこない、あるいは1対1で勝つ状況を作れないときに日本に次善の策はあるでしょうか。

杉崎 相手のサイドハーフが出てこなければ、サイドバックを起点にボールを握れる展開になるでしょう。3センターハーフがいるということも含めれば、後ろでボールを握ることができるはずです。日本の方がポゼッションを上げられるのであれば、攻め急ぐこともない。相手の焦りを誘うような大人のサッカーができるなら、それはそれで好都合。相手が来てくれないからと焦って攻めてボールを失い、攻め切れない状態が続く方が良くないと思います。それではリズムも悪くなってしまう。大迫がいないこともあって前に収めどころがないなかで、前線へ蹴っても、相手はそこから蹴り返さずつないでくることが多い。なかなか自分たちにボールにならないことも考えられます。そういう循環になることは避けたい。

――状況に応じて大人になれるかどうか。それは引き分けてもいい試合であることも踏まえて言えることですね。

杉崎 今回の先発が右サイドバックに山根で、CBに谷口が入り、3センターハーフに守田英正、田中碧がいるということになれば、川崎Fのサッカーがある程度、できるかもしれない。「別に焦らなくていいじゃん」というサッカーができるという意味で、この選手起用がプラスに働くことを期待したい。

――ホットポイントは、日本の右サイド対オーストラリアの左サイドになると。

杉崎 先ほどは日本の攻撃の局面の話をしましたが、相手の左サイドは攻撃の際にけっこうローテーションしてくる。サイドバックが幅を取るのか、サイドハーフが幅を取るのか。どっちが中に入って来るのか、決まっていない印象があります。

――確かにフレキシブルにプレーしています。

杉崎 サイドハーフが中に入って、サイドバックは幅を取り、そこに同サイドのボランチが絡んで縦のラインを形成することもある。そこで日本がつかまえ切れていないと、苦しくなる。CBからボランチを飛ばしてサイドバックにボールを入れて、そのサイドバックがスルーパスを通す。通す先が、左のハーフスペースに走り込むサイドハーフ。日本の右サイドバックの背中から走ってくるようなイメージで危険な場所に入られることは避けたい。例えば、山根が先発するなら、山根が誰に付く、どっちに付くというところで、整理できていないと厳しい。オーストラリアの左サイドのコンビネーションは洗練されてきているので。相手の主力が招集外となったことで分からない面もありますが。

――あえて相手のキーマンを挙げるとすると。

杉崎 攻撃に関しては両サイドハーフですね。右のボイルは縦への突破があり、左は誰が出るか分かりませんが、連動性を持ってプレーしてくる。ここを押さえられるかどうか。そして相手の守備では左サイドバックのベヒッチかなと。前回対戦は伊東に何度も突破を許し、オウンゴールもして、彼にとっては散々な内容でした。当然、リベンジを誓っているだろうし、日本の強みを生かす場所でもあるので。

――日本のキーマンは?

杉崎 そのサイドハーフに応じるサイドバック。右サイドバックで先発する選手、おそらくは山根だ思いますが、プレーに注目しています。

取材・構成◎佐藤 景

◆Profile
杉崎健(すぎざき・けん)◎1983年6月9日、東京都生まれ。データ解析・配信会社を経て、ヴィッセル神戸、ベガルタ仙台、横浜F・マリノスでアナリストを務める。2019年には横浜FMで15年ぶりとなるJ1制覇に貢献した。現在は様々なメディアでアナリストとしてサッカーについて発信しているほか、「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、多方面で活躍している。


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