上写真=田中碧が「10分、15分で観察する」という分析力の高さで中国を見抜く(写真◎スクリーンショット)
「国を背負ってた戦う責任と誇りが」
中国が不気味だ。昨年12月に監督が元中国代表のリ・シャオペンに代わり、戦術もメンバーも前回対戦と同じかどうか不透明だ。
そんなときこそ、田中碧の出番。情報収集の高度なレーダーが本領を発揮する。
「サッカーは相手とやるものなので、ピッチに入って10分、15分で相手がどうプレーするのかを観察すればいいと思っています。それがサッカーで一番大事だと思うので、相手を見てサッカーができれば問題はありません」
「見る」ことで紐解く。ずっと培ってきた最大のストロングポイントが頼もしい。
ドイツではブンデスリーガ2部のデュッセルドルフで、タフなシーズンを戦っている。上位争いができていないこともあって、しっかりブロックを作ってから前に出ていく戦いに身を置いている。川崎フロンターレのときとは異なるスタイルだ。
「ドイツのボランチはボールを受ける選手が多いわけではないし、縦に速くて前の選手につけるスタイルが多い。僕もそれに参加しつつ、自分の価値を示すためにはボールに触ってコントロールする特徴を出したい。ボールに関わり続けて攻撃でアクセントを加えてコントロールすることは、常に意識しています」
昨年夏にブンデスリーガ2部に旅立ったのは、あえてそこを求めてのことだった。異なるサッカーの中でどこまで自分を出せるか。その挑戦のまっただ中だから、苦しさを見せることはない。
「いろんなサッカーにアジャストしなければいけないし、そこで持っているものを出さないといけないという歯がゆさもあります。それが自分の力のなさだけど、面白いというか楽しみながらやっています」
そんな充実の日々から、ワールドカップ最終予選へ。日本はホーム連戦で、自分たちでボールを動かす戦いが予想できる。感覚の切り替えが求められる。
「でも僕は、そこはあまり気にしていないというか、相手を見てサッカーをするので、それに応じて味方とコミュニケーションを取って、みんなを気持ちよくプレーさせることができればいい方向に出ると思います」
黒子の役割だが、この人はスポットライトを浴びる運命にあるようだ。初出場で初ゴールというインパクトのあるデビューから、あっという間に中心選手に駆け上がった。
「でも、自分ではそんなに変わらないですね。緊張感という意味では、オーストラリア戦で緊張していましたけど、だからといってほかの試合で緊張していないわけではないし、緊張の種類が変わるというか、国を背負ってた戦う責任と誇りがあります」
自覚はたっぷりだ。