およそ3年ぶりのカムバックだ。武藤嘉紀が2019年2月のアジアカップ以来、日本代表に帰ってきた。ヴィッセル神戸に加わってヨーロッパでの経験を生かして、昨季は5ゴール7アシスト。その実績を引っさげて復帰し、ワールドカップの忘れ物を取りに戻る挑戦が再スタートだ。

上写真=武藤嘉紀はアシストが増えたことを自ら評価している(写真◎スクリーンショット)

「代表に戻る強いビジョンを胸に」

「ワールドカップで求めていた結果、求められていた結果を出せなくて、悔しい思いをしました。それはワールドカップでしか晴らせない」

 2018年ロシア・ワールドカップで日本はベスト8を前に敗退、ベルギーに食らった衝撃のカウンターは記憶に新しいが、武藤嘉紀はグループステージ第3戦のポーランド戦で82分からピッチに立っただけだった。

 2019年のアジアカップを戦ってからは日本代表からも遠ざかり、昨年夏にヨーロッパから日本に戻ってヴィッセル神戸に加わった。ここで5得点7アシストを記録して、久々に森保一監督から声がかかった。

「どの選手にとっても日本代表は特別なもので、自分自身、そういう気持ちを忘れたことはないつもりです。だからこそ、日本に帰ってきたときにもう一度、代表に戻る強いビジョンを胸に秘めていました。今回しっかり形となって結果として出たのは非常にうれしく思います」

 マインツ(ドイツ)、ニューカッスル(イングランド)、エイバル(スペイン)とヨーロッパでの経験を踏まえて残したこの数字、「ゴールはもっと取りたかった」「アシストできるようになったのは課題をクリアした」という自己評価だ。

「相手ディフェンダーの気持ちからすると、アシストもあって自分で行ける力もあって、その2つの選択肢があればより怖い選手になると思います。1トップであれば下がることはないのでアシストよりも決めきる役割だけど、神戸では2トップやサイド、たまにボランチもやって、最後に仕留めきるのかパスでアシストにするのかはいい判断ができています」

 ヨーロッパで戦い続けて、日本に戻って、味方に点を取らせる余裕ができた。ポイントは「脱力」だという。

「フィジカル面で言ったら、より力を抜く方にフォーカスしました。屈強なドイツ人、イギリス人、スペイン人に対して強くなければいけないと思っていましたが、強さだけではなくしなやかさ、脱力した状態の重要性を感じました。徐々にできるようになってきて、30歳近いけどそれを覚えられたのはプラスになりました」

 脱力系アタッカーへの変貌だ。

「力が入った状態だと相手をいなせないんです。力を抜いている状態から適度なところで力を入れるタイミングによってポストプレーや相手の反対に抜けることができるのが分かりました。トップレベルの選手たちも間違いなく、強さだけではなくて脱力することができていると思っています」

 力というものは、入れすぎても、抜きすぎても意味がない。絶妙にコントロールする身体操作とメンタルの余裕が身について、青年が大人になるかのように、大きな進化を遂げた。その姿を日本代表で見たい。


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